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「胃腸炎ですね」
獣医さんの言葉に私はホッと胸を撫で下ろす。
でもきっと原因は私だ。
私が純太朗さんをほったらかしにしていて、ストレスを与えてしまっていたのだ。
「純太朗さん、ごめんなさい。私は本当に悪い彼女です」
診察室を出ようとしたところで、純太朗さんの尻尾が左右に揺れる。
不思議に思って待合室に目をやると、そこにいたのはあの時の女ボーダーコリー。
「あれっ? 西野?」
どこかで聞いたことがある声に視線を上げると、女ボーダーを連れているのは有川君だった。
「……この子がハナさん?」
ハナさんは目の前に有川君という彼氏いるのにもかかわらず、純太朗さんに誘うような視線を送ってくる。
対する純太朗さんは……。
何と彼女のお尻の匂いを嗅ぎ始めたのだ。
ハナさんも嫌がってはいない。
でも、でも、そんな犬みたいなこと……。
いや、犬なんだけれど……。
彼女である私の前でそんなこと、今まで一度だってしたことがなかったのに……。
有川君は自分の彼女が他の男と仲睦まじくしているというのに、二人に笑顔を向けている。
受付で純太朗さんの名前を呼ばれると、私は逃げるようにその場を後にした。
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