純太朗さんはワンコ系彼氏

11/12
前へ
/12ページ
次へ
 純太朗さんの体調は、その後落ち着いていた。  でも、私の前であんなあからさまな態度をとってみせたにもかかわらず、彼は何か言う訳でもなく、いつも通り穏やかな表情をしている。  私がソファに腰を下ろすと、純太朗さんは膝の上にその鼻面を乗せてくる。  それはいつものことだけど……。  私は慌てて立ち上がる。  ブラウンの瞳が驚いたようにこちらを見上げてくる。 「……じゅ、純太朗さん。あんな事をしておいて、それはあまりな態度というか……。私は純太朗さんから何も言い訳を聞いてないですよ」  純太朗さんは可愛らしく首を傾げる。  真っ直ぐこちらに向けられる瞳は、いつも通りキラキラと輝いていて、後ろめたさは欠片も見受けられない。 「私はとてもショックを受けました。あんな、あんな恥ずかしいこと、私の目の前で……」 「クゥン」  純太朗さんが悲しそうに鼻を鳴らす。 「えっ? 純太朗さん今何と言ったのですか?」 「クゥーン」 「すみません。聞き取れませんでした。もう一度言ってください」 「ワゥン」  背中の辺りを何か冷たいものが伝う。 「純太朗さん、ふざけないでください。いつものように、私にわかるように……」 「ワォン、ワン」  けれど、何度聞いてみても純太朗さんの発する声は、私の中で意味のある言葉とならなかった。  純太朗さん、どうしたと言うの?  私達はあんなに心通じ合っていたというのに……。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

17人が本棚に入れています
本棚に追加