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日曜の遊園地は混雑していて、人気アトラクションはどこが先頭かわからないほど順番待ちの列が長く伸びていた。
「うわー、めっちゃ混んでる」
芽依ちゃんはそう言って眉間に皺を寄せていたけれど、何だか楽しそうだ。
「これ、今日中に乗れんの?」
「無理っしょ」
「泊まりじゃね?」
「それも無理。腹が減る」
「遠藤、いつも腹減ってんじゃん」
芽依ちゃんが楽しそうに笑う。
「あー腹減ってきた」と大袈裟にお腹を抱えてみせる遠藤君に、周りの男子が蹴りを入れた。
有川君は笑いながらこちらを振り返る。
「そう言えば、西野も犬飼ってるんだったよね?」
「……はい」
私は曖昧に頷いてみせた。
純太朗さんのことを飼うと言うのは何だか違和感がある。
私達はお付き合いをしているのだ。
「ウチはボーダーコリーなんだけど、西野んとこは?」
「純太朗さんは純太朗さんです」
何犬だとかどうでも良いことだと思う。
「彼氏がいる」と聞いて、一言目に「人種は?」と尋ねているようなものだ。
有川君は純太朗さんに似たブラウンの目を少し見開いてみせてから「そうだね」と言って微笑んだ。
「ウチもハナさんはハナさんだ」
「ハナさんと言う名前なのですね。可愛い名前です」
私がそう言うと、有川君は「だろだろ」と嬉しそうに頷いてみせる。
「ハナさんさ、昨日ガラス窓に映った自分の姿見てビクンってなってて、めっちゃ笑った」
「あ、純太朗さんも前やってました」
映った自分の姿を見てビクリと驚いている純太朗さんを思い出して、私はふふっと笑う。
「普段賢いのに時々おバカなことやってくれるからマジ可愛い」
もしかしたら、有川君もハナさんとお付き合いしているのかもしれない。
有川君とは話が合いそうだ。
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