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「おはようございます」
教室前の廊下を歩く芽依ちゃんの後ろ姿に声をかける。
「あ、裕菜、おはよう。昨日のメンバーで今度カラオケ行こってなったんだ」
カラオケならば、純太朗さんとのお散歩デートまでには帰れるかもしれない……。
有川君とはワンコの恋人持ち仲間だし。
それならば純太朗さんも許してくれるだろう。
「楽しそうですね」
「何か有川と良い感じだったしね」
芽依ちゃんは声を落とすと、何だか意味ありげな笑顔を向けてくる。
「有川君とは境遇が似ているのです。彼も家に彼女がいるようなのです」
「家に彼女? 意味わかんないけど……。じゃあ、決まりだね」
「ただいまー」
私がドアを開けると、珍しくお母さんが待ち構えていた。
「良かった。今日は早く帰ってきてくれたのね。タロを病院へ連れて行ってほしいの。さっきから吐いていて……」
「えっ……」
私は慌てて純太朗さんに駆け寄った。
いつもキラキラと輝いているブラウンの瞳が悲しげに曇っている。
「純太朗さん、大丈夫ですか?」
私はダメな彼女だ。
遊び歩いていて純太朗さんの体調に全然気づいてあげられなかった。
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