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僕の愛しい人
吸血鬼が作家なのはおかしいことだろうか。
でも、生きていくためには必要なことなのだ。
『血じゃねーの?』
と思う人もいるかもしれない。
確かにそれが至福ではあるが、必ずしも主食ではないし、人のだべものであっても生きていけるのだ。
ただし始祖であれば。
ただの吸血鬼になりたいと
ただの人になりたいと心から願ったことだがそんなことは世界も同胞も許してくれることは無かった。
最終的には裏切り者と罵れ、罵倒される。
どの世界に行っても、
どの地方に行ったとしても
幸せが常にあるわけでは無かった。
必ずしも運命には逆らえないと
何度も思わされた。
それは神が地上で暮らした時から。
人がこの世で暮らし始めてからこの目で見て考えてきた。
あるときには祖国を愛しているくせに自らを祖国の敵として倒された男。
最後まで祖国を守る姿は見る人を惹きつけ、その背中でどんどん進み、支えていった。
誰かを甘やかすことはなく、誰かを不平等に怒ることもない。全ての家臣や人々に平等に接していた。
僕が今まで生きていた中で見たことがないほど魂はおどろくぼど綺麗だった。
あるときには世界で一番嫌われている人に出会った。その人物を聞くと全員が裏切り者って罵るのだろう。
彼の過去を知る人はこの世に存在しない。
神の子を本気で信じていたわけではなく、半ば同情のような目で見ていたのだろう。
人々に救世主として崇められ、人として認められることのない人生。それは弟子ですら、神の子の本質がわかることなどなかった。想像していなかった。人だと言うことを。
皮肉を言って仕舞えば、世界で一番嫌われている彼だけが神の子の本質に気づいていたのかもしれない。最後まで救われず、自分の信念を曲げることは無かったのだろう。神はいないのだから。と。
素晴らしく、そして面白い人だった。
あるときには天才ちゃんと出会った。
素晴らしい才能がある癖に周りからの劣等や嫉妬でどんどん原石が汚れていってしまった。愛する人とは結ばれずに遠く朽ちていった。誰の作品とも比べものにならないほど美しかった。
それと、神の子を祭ることが流行ったのはこの時代だった。今の平和や時代とは違い価値観や倫理観は失われていった。人と違うならば断罪され、好きな人とも結ばれることは無かった。
そして、この生涯で唯一眷属にしようと思った人。
その人は王様であった。
平和だと思ったけど、表面に現れてないだけで裏では真っ黒に染まっていた。
その真っ黒な人から守るために子供達にも一切の愛情を向けることは無かった。
家族が弱点だとしれば、狙うかもしれない。守るためならば自らの命でさえ、捨ててしまう。大事な家族に嫌われたとしても。
陰ながら見守ることにしたのだろう。
ほんと不器用だと思う。
数年が好きだとき、恐怖政治は続いていた。
真っ黒はより暗くなり、漆黒に近づいていた。
彼の心情にどういう変化はないが、彼の愛した女性はたった二人の子供を残し、なくなってしまった。子供の心に傷を付け、唯一愛した男にも一生が残るほどの記憶をうめつけた。
彼女が残した宝を愛して見ようとした。
それは彼女からの最後のメッセージだからだ。
『陛下。私の宝を守ってね。
愛してるわ。』
それだけではないが。
子供たちには冷たくあしらっていた。
私の気持ちを父親がわかってしまったとき、守ることどころが殺してしまうかもしれない。それが怖くて、子供と接することができなかった。子供たちまで利用されるとが嫌だった。
父親とすら名乗れない。
名乗ることは許されない。
それでも許してくれるなら、
謝らせてくれ。
馬鹿だなぁ。
そんな思いも虚しく。
彼の一人娘は殺された。
自殺だった。
アホ。
もっと早く、気づければ良かったのにな。
そんなに悔やむくらいなら後悔するなよ。
しょうがない。
本当に世話が焼ける。
『血の契約だ。
我の眷属になるのだったら。
たりない力をやろう。』
その力で実の父親を殺した。
マントも汚れ、血を浴び、悔やんでも悔やみきれず最後は自ら剣で貫いた。
俺は始祖だから。
守りたいときに守る。
守れなかったとしても。
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