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持ちかけると、家永は目を見開いた。奈月は、続ける。「きっとその子、あんたとしたがってるよ」
「あんたのこと、好きで仕方ないんだよ。ドルオタで、ライブ行くときはお手製の羽織着てて、握手会のチケットのためにアホなほどCD買ってるけど、それと同じくらいに部活もがんばってるって後輩に聞いて。気になりだしてると思う」
「……」
「わ。私は、……なんていうか」
温もりが欲しいというか。したいというか。だから、と視線を持ち上げ、真っ赤な顔の。背の高い彼に、真っ赤な顔で。言う。
「キス、しよ。」
しばらく静かで。静か過ぎて。ただ、心臓が爆発しそうなほど高鳴っていて、雨音がしなくなっていて。どうしたんだろうと思うも、視線は相手から外せず。
「……目、閉じろ」
酷く優しい。けれど照れた顔で、家永は奈月の華奢な撫で肩をそっと掴み、そして顔を近付けてくる。温度が絡み合うと、もうお互いの整った顔は、傍にしかない。
無音な窓辺。浅い、けれど長い、口付け。──さら。と、奈月の髪が落ちて、シャンプーの香りが家永の鼻腔をくすぐった。息遣いと、熱を帯びた視線と。それと、胸が焦げ付いてしまいそうなほどに相手を想えば、口付けることに後付したりする理由なんて要らないけれど。そっと、そっと離れてみると。
「……雪」
「え?」
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