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窓を背中にしていた奈月は、後ろを見つめて言われて振り返ると、静かに。ふわり、と。しかし、どこか厳かな雪白が空から舞い降りており、そこでようやくこの寒さと無音の理由が分かったのだ。
「栗山、お前」
「……うん」
俺と付き合うか? ──家永がそう言うまでに、沈黙が紡がれていて奈月は焦れることにもなる。そして、言われて頷くまでに、今度は奈月が沈黙を紡いで家永は心臓が口から飛び出るかとおもうほど、緊張することになる。
それから、やっとの告白の後に、頷きあって笑いあいながら、イタズラに再び口付ける結末。ということを、知っているのは、降り続く雪だけ。ただ、それだけで、二人の感情を白く柔らかく包み込み、やがて温度で溶けてしまって消えてしまう。雪だけ、だった。
end.
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