くちづけスノウアンサー

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 そして、映画を観た率直な感想。これ、切ない甘いエロいの三拍子だろう。狙い過ぎじゃないか。観ているだけで赤くなり、中盤の濡れ場シーンから既にスクリーンを直視できることはなかった。フィクション映画とはいえ、その中でクラスメイトと自分がセックスをしているのだ。しかもねっとり。色々困る、と思った。  映画館に居る時だって、何人もの客に「ヒロイン役の方ですか!?」と目を輝かせたようすで声をかけられた。いえ違います、と誤解を解くのも大変だったが、それより先にさっさと映画館から出ておきたい、と心の底から思っていたのだ。結局似ているというだけで、言い寄ってきた人とツーショットで写真を撮らされたりもしたし、酷い時は黙って写真を撮られもした。その時はさすがに奈月も怒り、問い詰めてシラを切られると「映画の笑顔が可愛いヒロインに締め上げられたいんですか」と胸ぐらをつかんで脅し、消去させたのだが。友人曰く、色々そのツラであの所業は詐欺すぎる、とのことである。  確かに奈月は可愛い部類に入る(作りの良い顔立ちの親に感謝)。しかし、その顔があのヒロイン。つまり、アイドルにそっくりだったなんて、奈月にとっては初耳だ。しかし、兄が「お前にクリソツな子テレビに出てんぞ」とこのあいだ笑いを堪えながら言ってきたが(兄もイケメン)、へぇ、と聞き流していただけであって。奈月は頭を抱え、それ以降自分がアイドルに似ているからと、声をかけられることが多かったことに気づき、あれはそういう意味だったのかと理解をした。もう少し、テレビを観ようとも思ったのだ。
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