くちづけスノウアンサー

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 そうして、帰りの繁華街で遊んで友人と別れた際、アイドルのグッズが売っている店にたどり着く。そこには確かに自分にそっくりな少女がウインクをしたり、バッチリと決めたポーズでカメラ目線のブロマイドのなかに存在していたが、ここまで似てるとここにだけは立ち入らないほうがいいな……。そう思うほどで、立ち退こうとした時にアキバ系の男たちに声をかけられ、アッキーですか、と興奮気味に問いかけられる。そこで奈月は、ヒロインの名前がアッキーであるということを知った。  いいえ違います。すぐに帰るべく踵を返すが、まってくださいと腕を掴まれ、写真をお願いします、目線ください、などとオタクの肉壁にかこまれ軽いパニックに陥る。何なんだこれは、いくら似てるからって常識もないのかこいつら!? ついに奈月は声を低くして「あのう、てめぇら本当に……」しばきまわしますよ。オタクの肉を鷲掴んで、投げ飛ばしてやろうかと思うほど追い詰められたところで、「退け!」と聞きなれた声がしたと同時にオタクの方々が吹っ飛んだ。 「そいつに近づくな!! 煮殺すぞ!!」  ──すぐ目の前に立って広い背中を見せ、オタクの方々に負けないほどのオタク衣装に身を包んだ美青年。端正な部品たちに甘いマスク、そしてよく見た顔。 「さっさと失せろ。三つ数える。数えても消えねぇんなら」  俺が消す。そう言って指の関節をベキベキ鳴らしていたのは。 「家永……」  クラスメイトの、家永逸陶だったのだ。
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