君に偏愛

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「中村さんは違うんだなこれが」  一ノ瀬君が意外そうな目で私を見た。私はと言うと内心、心臓がバクバクするのを必死に笑顔で誤魔化していた。 「じゃーん!」  取り出した虫かごの中に、よりによって緑色と茶色のカメムシが一匹ずつ入っていた。見た瞬間、ゾワっと鳥肌が立った。 「うわ、これやばいやつじゃん」  一ノ瀬君がのけぞった。その気持ちはとても分かる。私だって本当は白目を剥きそうなほどカメムシが嫌いだ。 「大丈夫だよ。こちらから攻撃しなければ臭い匂いを出さないんだ。ただ、どんな臭いがするのかすごく興味あるけど」  太郎君は宝物を見る様な目つきでカメムシを見た。 「さすが亀田虫太郎」  太郎君は嬉しそうに笑った。平気でカメムシを採集する姿を見た男子が亀田虫太郎ーー亀虫とあだ名をつけたが本人が喜んだ為に定着はしなかった。ひどいものである。 「それどうすんだよ」 「写真撮って周辺の地図に採った場所を書き込む」 「じゃなくて、そのまま教室に置いておくのかってこと」 「そうだけど。えっ、ダメ?」
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