君に偏愛

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「きっと中村さんにはそう言ってもらえると思ったよ」 「良かったな! 一人で活動するの大変だって言ったもんな」  一ノ瀬君が太郎君の背中をバンバンと叩いた。 「昼休みに早速部活動だよ、中村さん」  逃がすまいとするかの様に、太郎君は私の手をぎゅっと握った。破滅の予感がした。 「じゃあ、写真撮ってくれるかな」  花壇の前で太郎君から渡されたタブレット端末を恐る恐る構えた。 「中村さん、緊張してる?」  葉の上に載せた焦茶色のカメムシにピントを合わせる手が震えた。 「ごめん、こういうの苦手で」 「そっか。じゃあ、写真は僕が撮るね」  太郎君は手早くカメムシにピントを合わせ何枚か写真を撮った。 「撮った後は、採集記録に画像をダウンロードして……」 「う、うん」  太郎君の顔がすぐ近くにあることより、アップになったカメムシにドキドキした。 「名前は、『クサギカメムシ』って打つでしょ」 「うん」 「場所は学校の下駄箱」   「えっ、そんな所に?」 「家の中にもよく入ってくるよね」  昨日、ベランダにいたのを思い出して鳥肌が立った。
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