君に偏愛

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「カメムシっていったらこいつを思い出すくらいノーマルなタイプ。果樹の被害も多くて実は困ったやつなんだ。じいちゃんの畑に植えた枝豆もだいぶやられちゃった」 「そうなんだ……」  そう言う割にカメムシを見つめる太郎の目は相変わらず優しい。 「畑仕事をするじいちゃんにとっては天敵だから、最初は虫が好きなんて言えなかったんだよね」 「え?」 「でも、じいちゃんが自分の好きなものや好奇心は隠すものじゃないって言ってくれてさ」 「うん」 「それで誰にも理解されなくてもいいから、自分の好きなことをやろうって『虫を愛でる』部ーー本当は同好会なんだけど、先生にお願いして活動始めたんだ」 「そうなんだ。いいおじいちゃんだね」 「うん。最高だよ」  キラキラした笑顔の太郎君には、本心を隠している自分がどう見えているのか考えると少し怖くなった。 「あっ、ハラビロカマキリ!」  太郎は俊敏な動きで大型のカマキリを網で捕獲した。 「ねえ、噛まれたりしないの?」 「噛むよ。鎌で挟んたりもするし。このデカさはメスだな」  その様子を想像して、喉の奥で悲鳴が出かかった。 「大丈夫だよ。変に攻撃しなければ」
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