君に偏愛

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「大丈夫だよ、中村さん。すごく躍動感出てる」 「亀田、資料写真に躍動感いらんて」  二人は私を置き去りにして、笑い合っている。良いところで邪魔に入った一ノ瀬君を密かに睨んだ。 「写真の腕はともかく、二人だと効率よくマップが作れそうだよ。今後ともよろしくね」  私の心がこれ以上は無理と叫んでいる。 「えっと、こちらこそ」  なのに、太郎君の笑顔見たさに良い返事をしてしまった。 「放課後も時間ある?」 「今日はピアノのレッスンがあって」 「中村さん、ピアノ弾けるんだ。かっこいい」 「そういえば、一年の時の合唱コンクールで伴奏してたね。今年ももうすぐ出番なんじゃないの」  一ノ瀬君とは一年の時も同じクラスで気心知れていた。私が極度の虫嫌いなのを忘れているのか、知らないふりをしているのか、やけに私を虫部に入れたがる。 「私より上手な人沢山いるし、今年は辞退しようかなって」  前回、緊張で演奏の途中に頭が真っ白になってしまい、何とか弾き直せたけどみんなに迷惑をかけてしまった。みんなからは慰められたけど、次弾く勇気が出なかった。
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