二章:主上のお茶会

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『十一話:花妖精』 翌日。  快晴を中央に四人が席に座り 向かい側に紫苑と金鳳が立った。  数枚の資料を金鳳が壁に貼る。 「初日に調べた快晴殿の結果が出たよ」  手元の紙をペラリと捲り、真剣に快晴を見た。 「はっきり言って、快晴殿の体はいつ死んでもおかしくない」 「……は?」 「えっ?」 「紫苑さん、それって、どう、いう?」 「……」  混乱が広がる中、一人驚いた様子もなく静かに目を瞑る。 「快晴殿の体は、簡単に例えるなら網目状に穴が空いてる。つまり半分は穴、体の細胞が死んで修復されていないんだ。原因はまぁ、言うまでもないよね」 「あぁ」 「死んでしまった細胞は元に戻らない。今の快晴殿は生き残った細胞達が騙し騙し動かしてる。勿論ひとつの細胞にかかる負担は単純計算二倍だ。細胞が体を支えられなくなった時快晴殿は、」 「待って!!」  ぎゅっと緋袴を握りしめた茜がガバッと縋るように紫苑を見つめた。 「ねぇ紫苑さんなら、王都の技術なら、どうにか!」 「王都の技術では無理だよ」 「そんなっ、」 「快晴殿の体の穴は骸の残った死体だ。死者を甦らせる事は誰にも出来ない」 「そんな……」  ぽた、ぽた、と袴を濡らす一人娘の肩を抱き寄せ優しく抱きしめた。 「快晴の体は……あと、どれくらい持ちそうなんだ」 「それも分からない。何故なら、今生きてる細胞は常に最良の状態に保たれてるからね」 「それって…」  朔夜と紫苑の目線が快晴に集まると、茜を抱きしめたまま肩をすくめる。 「お父さん…?」 「快晴殿、毎日治癒術で体を癒してるでしょ」 「…ご明察。流石は王都随一の名医だな」 「快晴殿は自身の持つ強い治癒術で細胞を癒し続けてる。快晴殿の治癒術が体に行き渡る限り、この危うい均衡は生に傾き続ける」  快晴のひねた賛賞を黙殺し淡々と説明を続けた。 「つまり、快晴殿の余命は快晴殿自身が快晴殿を支えられなくなった時。そうとしか言えない」 「そうか……」 「ボクから言えるのはまず快晴殿に無理をさせないこと。仕事は勿論、戦闘なんてもってのほかだ。毎日治癒術をかける余裕を奪わないこと。これが第一」 「わかった」 「それから、極力太陽の村から出さないこと」 「えっ、どうしてですか?」 「君達の村には神様からの御加護があるんでしょ?快晴殿は日の現人神とまで言われるんだ、神様からの御加護で九死に一生を得る可能性もある」 「確かに…わかりました。太陽様にも今度聞いてみておこうっと」 「最後に。これだけ子供達や皆から慕われてるんだから…快晴殿、最期まで足掻いてよ。ボクはこれでも医者だ。ボクの見知った人間が自死を選ぶなんて許さないからね」 「……もう、考えちゃいないさ」 「現状を支えているのは快晴殿の強すぎる治癒術。どんなに皆が頑張っても、快晴殿が治癒術をやめたら長くは持たない。それだけは承知しておいて」 「…わかってる」  張り詰めたような空気の中、ふわりと湯気の温もりが漂う。 「皆様、お気持ちは分かりますが今ここに快晴様はいらっしゃいます。まずは目前の快晴様を大切に致しましょう。はい、どうぞ」 「悪いな、ありがとう金鳳」 「いいえ。皆様も、一旦小休止ということで」 「あぁ、ありがとう金鳳。いつも悪い」 「いいえ」 「頂きます」  湯気の立つ湯呑みを一人づつ丁寧に手渡して行った。 「ふーふー…ん!ありがとうございます!」 「いいえ。紫苑様も、悔しいのは分かりますが立て板に水はよくありませんよ」 「…べっつにー、そんなんじゃないしぃー」  ずず…と湯のみを啜る主ににっこり笑みを浮かべる。 「快晴様、心中お察し致します。ですからどうか、お心が苦しくなったら私めにも教えて頂けませんか?お役に立てるか分かりませんが、第三者の視点から話を聞く程度なら出来ますので」  膝をつき、座る快晴と目を合わせて柔らかく微笑んだ。 「あぁ。わかった」 「ではこちらを」  湯のみを置き手のひらほどのそれを受け取る。 「金鳳花の押し花…の栞?」 「はい。中に私の髪と血が入っております。流石に髪と血だけだと気持ちが悪いのでお花で隠しております。何かありましたらこれに力を流してください。私が必ず聞き届けますので」 「そいつは凄いな。ありがとう、大切にするよ」 「ありがとうございます」  笑い合う二人にほんわりと空気がほぐれる。 (こういうところが金鳳のいいところだな) (そうだね)  一息とお茶を飲んでいると、ぼんやり金鳳の押し花を見ていた紫苑がぽつりと零した。 「快晴殿の治療、手が無いわけじゃないんだけどねぇ…」 「は……はぁ?!」 「どういうこと?!何か知ってるなら教えてよ紫苑さん!!」 「わわわわ、揺すらないでえお茶こぼれるう〜」 「茜落ち着け」 「はっ!ご、ごめんなさい」 「いーけど。でもボクちゃんと言ったでしょ、王都の技術では、無理だって」 「王都以外に快晴の治療が出来る技術があるって事か」 「んー技術ってゆぅーか……てかまず君ら花妖精って知ってる?」 「花?」 「妖精、ですか?」 「花妖精…?妖精の一種か」 「……」 「うんうんなるほど快晴殿以外は皆知らないと、んで快晴殿は言える感じじゃないと、はいはいりょーかい」  湯のみを置き、ぽんっと椅子から立ち上がる。 「じゃ、折角だし会いに行こっか。花妖精」  にやり、不敵な笑みを浮かべた。  紫苑と金鳳の先導の元、団内を闊歩する。  その後ろ、薄明が一人小首を傾げた。 「朔夜様、妖精とか精霊とかって実在するんですか?ずっと御伽噺の絵物語だとばかり…」 「実在はする。が、観測は難しい」 「彼らは一体なんなんですか?」 「大地の力が結集して生まれたとか、命の源に近い力そのものが意志のようなものを持ったとか、色々言われるがよくわかっていない。殆ど見つかってないからな。俺達にわかるのは精々付喪神くらいか」 「付喪神?」 「道具や無機物が長く心をかけられることで意志を持ったものだ」 「わぁ…!私の本もいつか付喪神になるでしょうか?」 「神になっちまったら使えないからお焚き上げ一択だぞ」 「はうっ」  ふんわり浮かぶ素敵な付喪神様像が一瞬で割り砕かれる。 「あー付喪神の話なら聞いた事があるかも。おじいちゃんが昔やっちゃったんだって」 「やっちゃった?」 「萌が愛用してた筆を付喪神にした事件だろ?俺も聞いたことがある。人気小説家の彼奴らしいよな」 「事件、なんですか?」 「俺達の間じゃ付喪神を産むことは良くない事とされてるんだ。どんな意思を持つかも分からないしな。だから大事な物でも名前をつけないことを徹底してる。うっかり付喪神を作っちまう事は己の制御ができていないって事なんだよ」 「おじいちゃんの付喪神はおじいちゃんの物書きが行き詰まってた時に念を込めすぎちゃったんだって。筆さんが社殿中覗き見し回って発見されたらしい〜」 「自己の制御、なるほど…難しいです……」  ぴたり。  ある部屋の前にたどり着くと前列の二人が足を止めた。 「着いたよ」 「ここって……」  重厚な扉、一階から地下にかけて広がる団内で最も大きい部屋。 「お前の温室じゃねぇか」 「そ。ボクの温室。今から花妖精に会わせてあげるけど、君達三人組はくれぐれも声を出さないように」 「声、ですか?」 「さっき話してたけど花妖精も本来なら君らは生涯会えないような存在なの。ボクがわかるのは花妖精だけだけど、彼等のような自然の生き物は人嫌いで相手を選ぶんだ」 「な、なるほど」 「金鳳も酷い嫌われようだよ」 「金鳳さんが?!」 「いやぁあはは……」 「機嫌を損ねやすいしすぐ引っ込んじゃって本題まで行かないから気をつけて」 「わかった」 「んじゃよろしく」  ガチャ、と扉を開け中へ入ると、強い湿気に心持ち体が重く感じる。  中は温度ごとに区分けがされており、手入れの行き届いた草花が青々と生い茂っていた。 (凄い、植物がいっぱい…綺麗…) (植物に関しては紫苑の右に出る者は居ないんだろうな) 「紫苑様、どの方になさいますか」 「どの?」 「はい、紫苑様はここにある全ての植物達と心を通わせ、花妖精とお会いになっております」 「それは……凄いな」 「まーね、言っとくけどボク結構すごいよ。でも荷物連れだからやっぱあの子がいいかな」 ((荷物…)) (まぁ違いはないんだろうが…)  そのまま部屋の中を進み、目線の高さに置かれた細長い植木鉢の前に立つ。 「この花は……」  紫苑がにっこり笑い、生い茂る葉に水を注いだ。  瞬間。 (((なっ!!)))  ぱっ、ぱっ、ぱっ  葉から茎を伸ばし、蕾がついて花開く。  柔らかい紫色の花の中から、開花とともに同じ色の何かが飛び出してきた。  四枚の細く薄い羽と花を模した着物、掌ほどの小さく可憐な少女。 「やぁおはよう、紫苑!」  ぱちぱちと瞬き、周りを見渡して、綻ぶように笑みを返す。 『こんにちは、紫苑。今日も美味しいご飯をありがとう』 (これは……声?) (これは花妖精の意思表示、花妖精の使う精神術式の一種のようです。紫苑様だけには肉声で聞こえているようですが) (なるほど。わざわざありがとう金鳳) (いいえ。声が聞こえているようで良かったです) (聞かせて貰えない時もあるんですね……) 「少し栄養剤と回復水の配合を変えたんだ。どうかな」 『とっても美味しいわ。紫苑は本当に、人にしておくには惜しいわね』 「ありがと、紫苑。最高の褒め言葉だと受け取っておくよ」 『ふふっ、うふふっ』  笑いながら楽しげにふわふわとあたりを漂う。 『あぁそうだ、こんにちは呪い子。相変わらず気持ち悪い子ね』 「はは…申し訳ありません」 『貴方が今日も紫苑の傍に居るなんて気分が悪いけど、お手入れはとっても丁寧だから今日も許してあげる』 「ありがとうございます」  ぺこりと丁寧に頭を下げた。  そのままにっこり快晴を見て、ちゅ、と軽く頬に口をつける。 「っ!」 『初めまして。私は紫苑の花妖精。お会いできて嬉しいわ、お日様の君』 「あ、あぁ。初めまして、紫苑」  るんるん、と嬉しそうに空を泳いで紫苑の頬にもちゅ、と口付けを落とした。 「ご機嫌さんだね紫苑。快晴殿はすき?」 『好き。とっても好き。お花はお日様とお月様が大好きなの。お水もお風も好きだけど。でもお日様とお月様が一番なの。だからお日様の君は大好き。お月様に嫌われた呪い子は大嫌い』 「なるほどね。ねぇ紫苑、お日様の君の体はわかるでしょ?」 『えぇ、えぇ。お可哀想に。闇に食べられて、明かりが淡くなってしまって、』  演技か誠か、目元に手をあてしくしくと泣いてみせる。 「快晴殿の体を癒す手立てを知らないかい?」  ぱちり。  手を下げ薄黄色の瞳を快晴へ向ける。 『紫苑は聖域への行き方が知りたいのね』 「…うん」 「聖域?」 『聖域は、この世で最も神聖な土地。花妖精と神木が住まい、大精霊と木行神が管理する、命の始まるところ』 「大精霊と木行神……?」 『その地に生い茂る者は命の源。特別な力を持つ木の実、治癒力をもった果実、そして命の泉の水は命を甦らせる力がある』 (((命を甦らせる?!))) 『うるさい』  (っ!)  ぴしゃりと不愉快そうに後ろの三人へ目を向ける。 『私、紫苑とお日様の君とお話してるの。盗み聞きの子は静かにしてて。私いまお話するのが楽しくていい気持ちなの』  嫌そうに顔を歪める紫苑の頬を、快晴がそっと人差し指で優しく撫でた。 「俺の連れが嫌な思いさせてごめんな」  暖かい手にするりと擦り寄りにこにこと笑みを浮かべる。 『いいのよ。お日様の君と紫苑だけだからね。特別だからね』 「あぁ。それで、命を甦らせる水っていうのは?」 『あのね、聖域は大地が始まる場所なの。だから聖域の水は命を宿す力がある。条件はあるわ。骸がないといけないとか、命の種類とか。命に近い生き物ほど上手く行きやすい。一番遠い人間は難しい。でもお日様の君は大丈夫よ。だってお日様は全ての始まりだもの』 「快晴殿に、聖域の水を飲ませてあげたいんだ。聖域への行き方を教えて欲しい」  紫苑と紫苑の薄黄色が交差する。 『…ごめんなさい、出来ないわ』 「いいよ。君は花妖精なんだもの。ただ理由を聞いてもいいかな」 『……分からないの』  悲しげにきゅっと口元に丸めた手を添えた。 「分からない?」 『私も本当は紫苑とお日様の君の為に教えてあげたいわ。けれど、私はここで、紫苑のおててで生まれ育ったから……聖域に行ったことがないの。花妖精失格だわ』 「そうか…ここは王都。結界に覆われたこの地で生まれ育てば、聖域は縁がないよね…ごめんね。君のせいじゃないよ」 『んーん、いいのよ。でもお話疲れちゃったわ。そろそろおやすみする。またね紫苑、お日様の君』 「うん。ありがとう紫苑。またお水の時間にね」 「おやすみ、紫苑」  にっこり微笑み、花の中へと包まれる。  ふわりと枯れるように花も伸びた茎も消え落ち、元の植木鉢へと戻った。 「お荷物君達とりあえず出よっか」 「…だな」  がチャリ、温室を後にした。  紫苑の執務室。 「皆お疲れ様」 「今お茶入れますね」  さっと茶器を出しお湯を沸かし始める金鳳。 「悪い、助かる」 「緊張しましたぁ…」 「背筋のびたぁ」 「おつかれさん」  ぐったりと背もたれにもたれ掛かる三人に金鳳がお茶を配って行った。 「でも流石自然と共に暮らす太陽の村の皆さんですね」 「何がだ?」 「花妖精の皆さんは本当に人嫌いで王都の人間は長老様以外会うことさえできないんです」 「そんなになんですね…」 「でもそっか、長老様も植物使いだもんね」 「えぇ、菫様も植木鉢でお育ての植物達と心を通わせておられますよ」 「お婆様の月下美人は本当に綺麗でね。偶に咲く時はボクも会いに行ってる」 「流石は菫殿だな…」 「快晴?」 「いや。しかし、結局神域の水が治療になるのはわかったが、肝心の神域がな」 「俺たちには探せないか」 「神域は文字通りこの世よりあの世に近い。だから命ひっくり返すことができるんだ。行くことはおろか、立ち入って帰れるかも分からない」 「そっかぁ…」 「ま、気長に探そうよ。それまで快晴殿を支えればいいだけでしょ」 「そう、だな……よし、無理はもう一生させないからな」 「そうだよ!のんびり隠居生活一択だからね!」 「手厳しいなぁ」  困ったように、嬉しげに笑みを浮かべた。 「でも本当に金鳳さん酷い嫌われようでしたね」 「まぁね、金鳳を呪ったのは月の女神らしいから。植物達からすると日と月は命の神だから、ね」 「そんな……」  項垂れる薄明の湯のみにお茶を注ぐ。 「薄明様、そこまで気にしないで下さいませ。私は生まれ持っての呪い子なのですから、認識として何も誤りではありませんよ」 「なっ!」  へらりと答える金鳳に薄明が立ち上がった。 「なんですかそれ!!金鳳さんは金鳳さんじゃないですか!!それ以外の何かをなんで勝手に決められないといけないんですか?!」 「っ!」  金鳳の黄緑色の瞳を見て叫ぶように言い放った。  パチパチパチ… 「紫苑、さん?」  一瞬静寂に、差し込むように紫苑が手を叩く。 「その通り。君は金鳳だよ、金鳳」 「紫苑様……」  優しい瞳を避けるように俯いた。 「金鳳」 「快晴様…」 「お前は俺の事を客人と扱ってくれたな。現人神として崇めるのでは無く、人として敬ってくれた」 「それは、だって、」 「お前は呪い子かもしれない。俺が現人神であるようにな。けど同時にお前は近衛術士団の副団長なんだ。俺が、国境の村大宮司であるように」 「それは……」 『私はただの呪い子です』  そう言おうにも否定することは快晴さえも傷付けることになる。二の句が継げずにただ、押し黙る。 「金鳳、主上がお前に会いたがっていた」 「主上が?」  驚いたようにぱっと朔夜を見つめた。 「翠姫の息子に、己が従弟に会いたいと。そろそろ呪い子以外の自分と向き合ってみたらどうだ。恐ろしいなら、俺達が居る。今度一緒に、」 「それは出来ません」 「っ!」  翠姫の名に俯いたまま、はっきりとした意思表示に一同が目を見張った。 「どうして…?主上がお望みなのに…」 「……主上が翠姫様に特別な感情をお持ちなのは知っています。今までも、形を変え私に心を砕いてくださった」 「じゃあ、」 「その主上の大切な翠姫様を殺したのは、私だからです」  ぐっと息を飲む気配とともに、沈黙が過ぎ去る。 「……申し訳ありません、回診の時間ですので」  逃げるようにその場を後にした。  回診の鞄を下げ、一人路地を歩く。  (思わず…逃げるように出てきてしまいました…)  俯き、石畳の石を数えるように前へ進む。  (でも、) 『お前のせいで!お前のせいで母さんは死んだんだ!!返せ!俺の母さんを返せよ!この卑しい呪い子が!』 『…っ、ごめ、なさ、』 『お前は厄災の呪い子。俺達が管理してやらなければ他者を不幸にするんだ。産まれてすぐ母を不幸にしたようにな』 「っ、」  冷たい記憶にひゅっと息を飲む。 「大丈夫、大丈夫、大丈夫…」  立ち止まってゆっくり深呼吸を繰り返す。 「早く回診を終わらせて、」  帰ってお茶を。  ガバッ、 「っ!んんっ!」  突如口元に布を当てられ、咄嗟にその腕を掴んだ。  しかし、 「汚い手で触んな」 「っ!!」  その声にびくりと震え抵抗する手が咄嗟に離れる。  (この、声…おにぃ…さ…ま……) だらり。  意識と共に腕が力なく滑り落ちた。 「はっ、はは、はははははは!!」  歓喜に濡れた笑い声が寂しい路地に響き渡る。 「言ったろ、お前は一生俺の玩具だ」  ――……僕の気持ちも考えて欲しかったよ。
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