エピローグ

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 〈エメラダ〉の帰還から二ヶ月が経っても、多忙を極めるメリイェル侯と顔を合わせる機会は、なかなか訪れなかった。  呪いのカメオの一件で、王城に召集されていたからだ。  人の口に戸は立てられない。死者が蘇り、神女と聖竜が呪いの地に舞い降りた話はたちまち王の知るところとなった。  誰よりも神女の人間らしさを信じている父王であるからこそ、エメラダ一人に成せるわざではないと疑ったのだ。  しかしどんなに審問にかけても、ロニーから疑わしいものは出ず、この一件はまさに、神秘に満ちた奇跡であると結論づけられた。  そしてカメオの件の思わぬ余波として、メラニー姫にもある箔がつくこととなる。  採掘業者たちが皆、メラニーのカメオと埋葬された後に蘇ったことから、メラニーは「復活」「不屈」の象徴として縁起を担がれた。  母国でそのように崇められる姫なら、王太子にも良運をもたらすに違いないと、盟友国でも婚姻に向けた準備は着々と進んでいるという。  先日、オットーに誘われた茶の席で、エファリューはそう教えられた。 『調子に乗って、しっぺ返しを受けないといいけどね』  馬鹿にされたことを根に持っているエファリューがそう言うと、かつての師は昔と違って穏やかに微笑みながらも、耳の痛い一言をくれた。 『ひとの振り見て我が振り直せ、とは……よく言ったものだな』  今、思い出してもエファリューは閉口してしまう。 「あの人は昔から意地が悪いのよ」  べっ、と舌を出して憎たらしい顔を鏡に映した。
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