163人が本棚に入れています
本棚に追加
エピローグ
光の届かない手狭な部屋で、エファリューはご機嫌で飛び起きた。
今日は新しい年の初め、花も咲きそむ、春の始まり。それは別にどうでもいいが、今日という日は特別なのだ。
屋根裏を降りて、素足に触れた床の冷たさにエファリューは飛び上がった。逃げるように、すぐそばの寝台に飛び移る。
意気込んで起き出してはみたものの、火のない部屋はまだ寒い……温もりが恋しくて、布団に潜り込んだ。
「さむさむ……」
「……何をしておいでですか」
夜がどんなに遅くて熟睡していようとも、気配に敏感な側仕えはさっと飛び起きて、寝台を出た。
「おはよう、アル! いい朝ね!」
「……おはようございます。いつになく、早いお目覚めで」
「だって今日は素晴らしい日よ。何と言ったって、ロニー卿に会えるんですもの。楽しみだわ!」
上掛けを放り出して、エファリューは素足のまま寝室を飛び出した。寒さに喚く声が遠ざかっていく。
「……わたしは貴女の驚く顔を見るのが楽しみですよ」
ため息混じりに鼻を鳴らして、寝具を整える。眠い目を瞬いて、アルクェスも仕方なく身支度を始めた。
最初のコメントを投稿しよう!