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追加エピソード①春の身支度
エファリューとアルクェスが城に帰ってきてから、エピローグまでの間にあったお話です。
※ドレスは外注せず城内で仕立てていると思ってください。
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エファリューがこの先もエメラダの身代わりを務めるにあたって、城ではある調整が急ぎで進められていた。
広げられた色とりどりの布地に型紙。その中心に据えられたのは身体の隅々まで、採寸されるエファリューだ。
エメラダとエファリューは背格好も変わらないので、ドレス類も特に新調せずにエメラダのものを着ていたのだが、一点だけ難点があった。
エメラダのドレスをエファリューが身につけると、胸元には悲しいくらいのゆとりができてしまう──。そう、よく似た二人だが、バストサイズだけは大きく異なっていたのだ。
これまでは、精一杯寄せに寄せて、上げに上げて……底上げ部材を詰めしこんで着こなしてきたのだが、これを機にエファリュー用にドレスを仕立て直すことになったのだった。
「新年に間に合うか、危ういところですわね」
「何としても間に合わせるのですよ」
「お顔映りはこちらの色味でいかがでしょう」
熱が入りつつも楽しげな侍女たちについていけず、採寸が終わったエファリューは長椅子にごろりと横になった。
「エファリュー様……。エファリューお嬢様……っ」
ミアが布地と色見本を手に、足下に侍る。
「ご覧ください。こちらのオーガンジーは如何です?」
「うんうん、素敵素敵」
「……シルエットは如何なさいます? ご希望はございますか?」
「背中が大きく開いてなければ、何でもいい」
「も、もうっ……お嬢様っ。もっと身を入れて、考えてくださいませっ」
色とりどりに煌びやかな花園で、胸の躍らない娘はいないとミアは鼻息荒く、エファリューに生地を合わせた。
侍女のお姉様方も集まり、次々にエファリューの上に花が咲いていく。
「チュールで薔薇をお造りになっては如何です」
「お袖は可愛らしくドロップショルダーにいたしましょう」
「こちらのレースの刺繍も華やかですわ」
きゃいきゃいと、楽しそうな女たちの中で、袖を通すはずの姫が一番関心が薄い。大胆な欠伸を隠さずにいたら、もっと真面目に考えろと迫られてしまった。
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