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また深い靄に覆われた。この村は時折そんな気候に見舞われる。
この日、その白いカーテンの向こうから彼は現れた。もう一歩も歩けない……そんな様子で倒れ込む。ただ一つの荷物、古いギターをかばうように抱いたまま。
「飾らず正直にありのままに。そこから信頼は生まれる。人間でもタヌキでも」
日美子の声は凛と力強く、高い空の雲を突き抜けるように響いた。
続いて同じ文言がリピートされた。丘の上に日美子と向かい合って座る人々――人とタヌキ達の、復唱である。
その柔らかい芝の上で、彼は眠りから覚めた。
「あっ目が開いた!」
「よかったー! ほらお水」
「食べ物もあるよ」
半身を起こした彼は、横にギターがあるのを確認するとホッと息をついた。
「柊といいます。皆さんが助けて下さったのですね」
「ようこそ、この村へ」
どっしり安心感のある日美子の挨拶に、柊は微笑み返した。
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