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「お前みたいな無能のクソが、なんでオレと同じクラスにいんだよ!」
ブレイズはいつもみたく俺に怒鳴った。
はぁ。
ブレイズに無能だから学校辞めろって言われるの、今日で何度目だ? もう正直こっちは慣れたもんでね。ショックでもなんでもないんだよ。
「ちょっと、ジャックくんにそんなこと言ったらだめだよ! ジャックくんだって、一生懸命頑張ってるんだもん!」
俺の隣から、俺をかばう声がした。
これもいつもの光景だ。
優しいなぁ、リリーは。
クラスのほぼ全員は──いや、学園のほぼ全員は俺のことを無能のできそこないだと思ってる。
王国で1番レベルの高い、ユピテル英才学園に入学できたのが、奇跡だった、と。
「うるせぇ。おめぇはなんでいつも無能をかばうんだ? あ?」
「だって、リリー、ジャックくんが──」
「もういいよ、リリー」
「ふぇ?」
リリーが悲しそうに俺を見る。
肩までかかる金髪に、うるうる輝く大きな碧眼。容姿は女神、中身は天使。純粋無垢なリリーは、他のクラスの男子生徒からもすごい人気があるらしい。
学園に入学してからすぐ、リリーと話すようになった。
席が隣ってこともあり、何かあれば顔を輝かせて俺に話しかけてくる。
俺がどんなに無能でも。
「ブレイズ、俺は君が言う通り無能だ。いちいち言われなくても自覚してる」
ブレイズが舌打ちする。
「認めてんじゃねーよ! なんなら歯向かってこいや! おめぇにプライドはねーのかクソ野郎!」
別に俺はブレイズが嫌いってわけじゃない。
ただ、めんどくさいやつだ。
俺はできるだけ目立ちたくないし、静かに卒業できればそれでいい。それなのに、ずっと、毎日、毎休み時間絡んでくるんだよな。
今は昼休憩の時間で、俺は食堂でランチを食べたあと、自習でもしようと思って教室に戻ってきていた。
そしたら、ブレイズがいたわけだ。
燃えるような赤髪に、炎がちらつく真っ赤な目。
炎属性のスキルを持つ家系に生まれ、その炎の力があまりに強大になった結果がこれだ。実力は確かにある。
ブレイズは最後に「落ちこぼれ」とかなんとか呟き、自分の席に戻った。
「ジャックくん、大丈夫?」
「ああ、全然。もう慣れてる」
「おんなじクラスメイトなのに、仲よくできないのかな?」
リリーは悲しそうに目をうるうるさせている。
可愛い。
ついつい、俺の秘密を言ってしまいそうになった。いや、それを決めるのはまだ早いか。
俺の目標は静かにこの学園を卒業すること。
もし俺が本当の力を隠してるってことが知られれば、静かになんて不可能。
目標を達成するために、というか、めんどくさいことにならないように、俺だって頑張ってるんだ。
だが──。
***
「え!? 退学!?」
「うむ。もし明日からの1学期末テストで、汝がクラス1位にならなければ、学園は汝を退学処分としなければならん」
学園長室。
俺はあのあとすぐ、学園長室に呼ばれていた。
アース学園長は俺が尊敬する先生のひとりで、かなり強い。
もし俺が本気でやり合えば──ここで自慢はやめておくか。
とにかく俺は学園長から退学処分の脅しをくらった。
「どうしてですか? 課題もちゃんとやってますし、成績も真ん中くらいにいますが」
「儂が汝に期待しているのは成績真ん中でも、課題を毎度提出することでもないのじゃ。クラスでは当然ながら他を圧倒しての1位──そして学年でも1位」
さすがに表情には出せないが、うんざりしていた。
そしたら静かに学園生活を送ることができないじゃないか。
だがよくよく考えれば、学園長が俺に厳しくなるのも当然。
俺は首席入学者。
入学試験のときは周囲との実力差とか、普通の実力がどうとかよくわかってなかった。だから全力で試験を受け、結果的に最高成績で入学したわけだが……今の俺からはその風格がどこにも見当たらないってことだろ。
困ったなぁ。
「そのままでいいと思っているのか? 汝の実力を知らしめることの何が悪いんじゃ? 儂には見えとる。汝の本気は、儂の想像を凌駕する、と」
アース学園長の透き通った青色の目は本気だった。
期待、されてる。
そこまで静かな生活を求めるなら、学園を辞めればいい。退学でもいいじゃないか。
そう思うかもしれない。
だがそうはいかなかった。
あのとき、約束してしまった──この学園を卒業し、最強の戦士になる、と。
「わかりました。クラス1位、取ればいいんですね」
「うむうむ。そうじゃ」
学園長が嬉しそうに微笑む。
どこからどう見てもおじいちゃん先生って感じだ。実力は桁外れだが。
「汝の実力を皆に知らしめるのだ。そのことで、皆の闘争心に火がつき、学園全体のレベルが上がる。託した、ジャック・ストロングよ」
~作者のコメント~
皆様、こんにちは! 「えすこめ」こと、エース皇命です。
第1話を読んで下さりありがとうございます。
主人公ジャックの実力、気になりますか?
あのブレイズやリリーは、ジャックの真の実力を知ったら、どういう行動を取るんでしょうか?
続きが気になる方は、ぜひ本棚登録よろしくお願いします!
面白い、読み始めたら止まらない作品を、更新していきたいと思います!
以上!
第2話もお楽しみに!
追伸:以後、作者のコメントは世界観に入り込んでいただくために設けておりませんが、アルファポリスではコメント付きの作品が読めますので、そのあたりはよろしくお願いします✨
https://www.alphapolis.co.jp/novel/888344613/570807142
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