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幸いにも水嵩があってリンは一命を取り留めたが、その体は酷い火傷を負い、予断を許さない状態だった。
結局、内輪揉めとして町奉行の世話にはならない方向で決着は付いたが、慎太郎は謹慎として蔵に押し込められた。
しかし、己のしたことの重大さに気付いた彼は自責の念で地獄を味わうこととなった。
この程度の罰などリンが受けた苦しみと比べたら比較にもならない―――。
そう気付いた時には何もかもがあまりにも遅かった。
謹慎を解かれた朝、店前で地面に膝を突き、慎太郎は両親と奉公人達を前にして精一杯の謝罪の意を示した。
「もうこのような過ちは犯しません。今一度、私に改心の機会を頂けないでしょうか…!」
頭を地に擦り付け、誠心誠意をぶつける。
奉公人達は彼の代わり振りに驚きを隠せなかったが、父は毅然とその心意を見定めた。
「今よりリンの世話をせよ。無論、跡取りとしての仕事もこなしてもらう。出来ぬなら出て行け」
それが父なりの答えであり、赦しはしないとの遠回しの通達だった。
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