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クロワッサン、金属光沢
コンクリートうちっぱなしの壁で四面を囲まれた部屋の中、膝より低い丸机の上の皿には真っ直ぐなクロワッサンが一つと二つ。
「ところで、フランス語で三日月のクロワッサンが真っ直ぐのには苦言を呈さざるを得ないと思う」
しかしそれよりも苦言を呈したいのはその色である。
そのクロワッサンは一つだけ、銀色の金属光沢をまとっていた。サクサクなんてもんじゃない、カチカチだ――といいたいところだが、触り心地は完全にクロワッサンだった。
「銀メッキ?」
なんで?
「『あー、聞こえているかな?』」
そんなところで、どこからか声が聞こえてきた。機械音声のようでもあり、少年のようでもあり、少女のようでもあり、老人のようでもある声だった。
「『それではルールを説明しよう。そのクロワッサンの中の二つには毒が入っている。毒が入っていない一つを食べることができたらゲームクリアだ。ここから出してあげよう』」
どうやら、僕は変なゲームに巻き込まれてしまったらしい。
「デスゲームもいいところだろ、そんなの」
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