クロワッサン、金属光沢

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 まあ、とりあえずこんな部屋からはさっさと抜け出したいところだ。しょうがない。言われた通り、三つのクロワッサンの中から安全な一つを選んで、食すとしよう。  しかし、一体どれが安全なのだろう。見た目じゃ想像がつかない――いや、明らかに見た目の違う銀色のクロワッサンはあるのだが、しかしそれが毒が入っていない証明にはならない。  ところで、こういうときは製作者の意図を読むのがいいのではないだろうか。つまり『クロワッサンが一つだけ銀メッキの施されている理由』を考えよう。 「銀ってのは確か、食器として暗殺予防に使われてたんだっけ?」  毒に反応して変色するから。 「ってことは…」  あの依然銀色に輝いているクロワッサンには毒が入っていないと考えていいのだろうか。だが、しかしそんな曖昧な考えに自分の命をかけてもいいのだろうか――というところまで考えて、思わず失笑してしまった。そんな曖昧な考えに命をかけないのならば、今後ここで命を落とすだけだろう。  というわけで、僕は銀色のクロワッサンを頬張った。  また、どこからか声が聞こえてきた。
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