セカンドコンタクト

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セカンドコンタクト

「失礼いたします。少しよろしいでしょうか?」  ベロフに待てを命じ、仮設ステージ裏から出てきた若者に声をかけた。年齢に似合わない高価なブランド品を身に着けている。 「何?」 「ライブの警備をしている者ですが……」 「チケットならあるよ」  遮るように招待客用のチケットをバッグから取り出した。 「恐れ入ります。お客様全員に手荷物検査をお願いしているのですが、よろしいでしょうか?」 「それ強制?」 「いえ……」 「この犬ムカつくんだけど」  爬虫類を思わせる目でベロフを睨む。 「何をやっているんだ!」  無線を受けて小走りでやってきた立岡と出水が、若者を見て顔色を変えた。 「申し訳ございません、修哉(しゅうや)さん!」  立岡が土下座をしそうな勢いで頭を下げた。 「こいつ誰?」  修哉と呼ばれた若者が横柄に言った。 「今回から警備を委託している業者でして」 「そ。席、どこ?」 「こちらへどうぞ」  凜人が止める間もなく、立岡が修哉を案内していった。 「あいつクビにして」  会場に向かいながら、修哉が立岡に命令するのが聞こえる。 「彼は何者ですか?」 「うちの専務の息子さん。梢の大ファンなの。仕方ない、あなたは予定通り配置について下さい」  頷いた凜人は会場の警備に戻った。  その後は滞りなく所持品検査も終わり、やがて開演の時間が近づいた。  バックステージのカメラで会場を監視する凜人の横に、出水が並ぶ。 「梢はね、悩みや葛藤を抱えてもがく若者の代弁者。少なくともファンの子はそう思っているわ」  梢を見守る出水の眼差しは厳しく、そして優しい。  定刻、照明が消える。一瞬後、大音響と共にライブが始まった。
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