セカンドコンタクト

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「修哉さんですが、今まで歌手やタレントとトラブルは無かったですか?」  バックヤードからライブ会場を監視しながら、凜人は出水に聞いてみた。 「ここだけの話で……」  出水は周囲を確認し、小声で続けた。 「梢のマンションで待ち伏せしたことが何回かあって、気味悪がってたわ。梢には近づかないよう専務を通して注意してもらってから、待ち伏せは無くなったけれど」  出水の歯切れは悪かった。頷いた凜人は、監視カメラに目をやる。  縦横無尽に走りながら歌い、叫ぶ梢の胸元で、銀色のコードに付けたカラフルな石が光る。  ライブの最終盤、梢は肩を抱き寄せながらバンドメンバーの紹介に入った。最前列で食い入るように見ていた修哉から表情が消える。同時に斜めがけしたバッグに手を入れた。一瞬間、凜人の脳裏に修哉を見つけたときの光景が蘇る。ステージ裏から出てきた修哉……、裏には仮設の発電機が並んでいたはずだ。  最後にベースの紹介を終えた梢が、ステージ中央に戻りかけた次の瞬間、ステージの照明が突然落ちた。客席で悲鳴が上がる。 「ベロフ、Go、Get(爆弾を見つけろ)!」  考えるより先に命じると、ハーネスを解かれたベロフが弾丸のように飛び出した。暗闇の中、火薬の臭気を嗅ぎつけ客席に走る。直後、ベロフを追う凜人の目に、ステージへ向け投げ込まれた縫いぐるみが飛び込んできた。やられた。そう思った刹那、高く飛んだベロフが縫いぐるみをキャッチすると、訓練通りに人がいない方向へ走り出す。  園内の地図を思い出しながらベロフを追う。すぐ先左、改装中で無人の区画があったはずだ。 「ベロフ、Left(左に行け)!」  改装区画のバリケード手前で、左に曲がったベロフに追いついた。 「Drop it(離せ)!」  走りながらベロフの離した縫いぐるみをキャッチする。ベーシストを模した縫いぐるみだった。そのままの勢いで転がりながら、改装区画の奥に縫いぐるみを投げ込む。ベロフをかばって抱え込んだ直後、着地した縫いぐるみが爆発した。
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