鏡の向こうに行けますように

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背後からしわがれた声で呼び掛けられ、私の意識は急速に現実に引き戻された。 声を掛けて来たのは、初老の警察官だった。 付近をパトロールしているらしく、チラシを 渡しながらこう言う。 「近頃この地域で、空き巣やストーカー被害が 出てましてね。お姉さんまだ若いでしょ? 何かあった時は、遠慮せず我々を頼りにして 下さい。」 警官は一見腰は低いが、言葉遣いは何処か 砕けた調子のある敬語であった。市民の警戒を 解く為、敢えてフランクな態度を取っているの かもしれない。 「ストーカー…」と口の中で呟いた私に、初老の 警官は「何か心当たりが?」と耳ざとく反応した。
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