鏡の向こうに行けますように

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最初に気配を感じたのは、一週間前。 仕事を終え自宅へ帰る途中、コンビニに立ち 寄った時だった。飲み物を買おうと冷蔵ケースの前に立ち商品を眺めていると背後に長身の男が 立っていた。 またあの人だ、と思ったのには訳がある。 実は此処に辿り着くまでの道中、道路反射鏡に 写った自分の背後に同じ男が写っているのを視認していたからだ。  身長はおよそ百八十cmで、黒い無地のニット 帽を被り黒いダウンジャケットに黒いスキニー デニムを着用している。 全身黒ずくめの男は、季節柄今にも宵闇にかき 消えてしまいそうだ。 根っからの優柔不断で普通にしているつもりでも無意識に人を待たせてしまう節がある私は、 念の為にすみませんと断りを入れケースの前から退いた。
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