2.それが自分の価値なのだと識る

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 既に日が沈みかけており、往来には帰宅途中と思しきサラリーマン達が、莉苑の前を早足で通り過ぎていく。  明らかに挙動不審な莉苑のことを気にかける人間はなく、たまにこちらを見ても「こんな所に立つな」と言わんばかりに睨みつけてくるばかりだった。  下を向き、人通りに怯えながら歩いていたせいか、信号が赤になっていることに莉苑は気付かなかった。  耳をつんざくようなクラクションが鳴り、莉苑が顔を上げると車が莉苑に向かって突っ込んできた。  ああ、結局俺も死ぬんだ。  幼少の断片的な記憶がフラッシュバックして重なった。  母親が男の元から逃げた時と殆ど一緒だ。元々こういう運命だったのだ。ヘッドライトの強い光が莉苑を照らす。  慌ててハンドルを切る運転手の顔が、スローモーションに映り、莉苑は目を閉じた。  ――瞬間、莉苑の身体は物凄い力で引っ張られ、後ろに倒れ込んだ。  ゆっくり目を開くと、同い年くらいの女の子が心配そうに顔を覗き込んでいた。 「びっくりしたぁ、危なかったね。大丈夫?」 「あ、……り、と……」  心臓はまだ跳ねていたが、何とかなだめて呼吸を整える。女の子はそれを待ってから、手を差し出してきた。 「立てる?」 「あ……はい……」
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