2.それが自分の価値なのだと識る

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 有難く掴まらせてもらい、立ち上がる。膝が笑っていた。それを見ると、女の子は支えながらゆっくり歩いて道路の隅に理苑を連れて行き、落ち着くまで背中をさすってくれた。  息が整い、ようやく人心地着いたとみて少女は訊ねた。 「さっきからずっとキョロキョロしながら歩いてたよね、どうしたの?」 「ご、ごめんなさい」  心臓が掴まれるような心地だった。やはり変に思われていたのだ。すれ違う人は皆綺麗な服を着ていて、何かに怯えてもおらず、ちゃんとしていて全く違う世界の住人だと思った。  そんな人達の中に自分がいていいわけが無い。理苑は一層下を向いた。 「あ、ごめん。責めてるわけじゃなくてさ、心配になったっていうか。どっか行こうとしてた?」  女の子は何でもないように言った。その自然な雰囲気が理苑の心に馴染んだ。 「えき……に、行きたくて……」 「駅?すぐそこだよ。ボクもこれから行くし、一緒に行く?」  そう言って女の子はにこりと微笑んだ。  理苑の張り詰めていた何かが緩んだ気がした。 「行こっか」  少女に手を引かれ、二人は駅に向かった。 「ボクはこの後新宿に行くけど。キミは?」 「え、と……」  莉苑は口ごもった。何処に行けばいいのか分からなかった。とにかく家から離れられれば。あの父親から逃げられるなら何処だって良かった。 「もしかして、行くとこないカンジ?」
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