2.それが自分の価値なのだと識る

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 莉苑の様子に、少女は何かを察したらしい。莉苑は頷いた。  少女はスマホを取り出して物凄い速度で何やら打ち込むと、ニッと笑ってこちらを向き直った。 「じゃあボクたちと一緒にいればいいよ!今リツさんにも連絡したし、ぜひ連れておいでって言ってたからさ」 「ボクたち……?」  莉苑は首を傾げた。少女の家族と一緒に暮らそうということなのか。 「そ!ボクとかキミくらいの子達が集まって、リツさんっていう人の元で一緒に暮らしてるんだ。みんなめっちゃイイ人達だし歓迎してくれるからさ」 「そう、なんだ……」 「だからおいでよ、意外とたのしーし、お金稼げる方法だって教えてくれるし」  本当にそんな所があるのなら。でもそう話す彼女は幸せそうに見えた。  莉苑はコクンと首を縦に振った。女の子は「じゃあ決まり!」と嬉しそうに笑った。  莉苑は切符の買い方すら知らなかったが、それでも彼女は嫌な顔ひとつせず、莉苑に色々と教えてくれた。  初めて人の優しさに触れて、戸惑いつつも嫌な心地はしなかった。  目的地に着くまで、彼女は身の上を含めて色々と教えてくれた。  彼女の名前はユウといった。そして彼女は、彼「女」ではなかった。  莉苑が驚いて目をしばたかせると、ユウは笑って「結構多いよ」と言った。  ユウが話すことは、莉苑にとっては新鮮なことばかりだった。
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