2.それが自分の価値なのだと識る

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 莉苑のような生い立ちの子が、何人もいるということ。そういう子達が、お金を稼いで自分たちで生きていること。その中で恋人や友人が出来るということ。 「ボクも彼氏いるんだぁ、見る?」  そう言ってユウは口元を弛ませながら、スマホの画面を莉苑の前に差し出した。そこにはユウと、一回り体格の良い整った顔立ちの男性が写っている。 「……格好いい人だね」  そう言うとユウは、でしょ、と嬉しそうにニッコリ笑った。  写真の中の二人はいかにもお似合いのカップルで、莉苑には素直に羨ましかった。 「ユウは、幸せなんだね」  莉苑は思わずポツリと呟いた。  その言葉にユウはピクッと肩を揺らし、少し間を開けて「今はそうかも」とだけ言った。  おかしな事を言っただろうか、そう聞く前に電車のアナウンスが目的地を告げた。 「行こ」  ユウはさっと立ち上がって莉苑を急かした。  物凄い人の流れに押されるように二人は駅を出た。 「いつもこんなに人がいるの?」  ユウを見失わないように、必死で足を動かしながら莉苑は聞いた。出発駅もかなりの人通りだったが、その比ではない。せめてなるべく人とぶつからないよう、莉苑は肩を小さくすぼめた。 「んー、まぁ大体こんな感じ。でももう少し歩いたら人減ってくるから」  ユウは莉苑がはぐれないように手を引いてくれた。  高いビルの間をしばらく歩くと、少し開けた広場のような所に出た。
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