2.それが自分の価値なのだと識る

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 そこでは何人かの男女がグループのように集まり、喋ったり寝転がったりしていた。  よく見ると彼らは殆どが若者で、莉苑と同じくらいの歳の子もチラホラいるようだった。ユウは慣れた足取りでその中を進んでいく。 「ユウ!」  ある雑居ビルの手前でユウが立ち止まると、奥の方から少女が現れた。  恐らく莉苑より少し上、十七、八といったところか。いわゆる地雷系と呼ばれるようなモノトーンカラーの服はかなり着古されているようだった。 「リツさんがご飯配るって言ってるから、モカ行ってくるけど、ユウは?」  そう言いながら、「モカ」という少女はユウの後ろに隠れるように立っている莉苑に気づいて、グッと距離を縮めた。 「この子どうしたん?」  咄嗟に肩を小さくする莉苑を庇いながら、ユウは笑いながらモカに経緯を軽く説明した。  モカはふーん、と言って莉苑の顔をまじまじ見る。 「めっちゃ可愛くない?」 「え、それな?ずっと思ってたわ。リツさん好きそう」 「あーね、分かる」  何やら自分のことで盛り上がっている二人の間に入れず、莉苑はソワソワと目を泳がせた。こういう空気はあまり得意ではない。というか全く慣れていないのでどうしたら良いのか分からない、というのが正解だ。  と、モカが気付いたように声をあげる。 「てかリツさん来るんだって、早く行こ」 「やば、ご飯なくなる」
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