2.それが自分の価値なのだと識る

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 ユウとモカが揃って莉苑の方を向くと「リオンも行くよ!」と笑った。  どうやら受け入れて貰えるらしいことに莉苑は安堵して小さく頷き、二人の後を追いかけた。  ***  数日間、莉苑はユウと共に生活した。たった数日だというのに、それは莉苑にとって目まぐるしく濃密で、ついていくのに必死だった。  ユウは莉苑に、生活のいろはを教えてくれた。もっともそれは、世間のごく一般的な生活とは程遠かったが。  まず寝泊まりは、安いホテルに複数人で部屋を借りるか、モカやその他の友人の家、ネットカフェを転々とする。ユウは「タイミング悪いと野宿とかあるんだよねぇ」と、渋い顔で言っていた。  それから食事が、基本コンビニかボランティアの炊き出しの一日一食だった。中には万引きする子もいるが、補導されたら面倒くさい。家に強制的に帰される。仕事をすればご飯くらいは食べさせてもらえる。ユウはそう言った。 「仕事って?」  莉苑が訊ねると、ユウは遠くを見ながら「ウリ」と答えた。ピンと来ないような顔をする莉苑に、ユウは少し表情を翳らせる。 「オジサンとセックスしてお金もらってるってこと」  軽蔑したでしょ、投げやりにそう言ってユウはチラリと莉苑に視線を投げた。  莉苑はかぶりを振る。ユウは自虐的に笑った。 「別に無理しなくていーよ、フツーに考えてキモいと思うし」 「……おれ、も、父親とそういうことさせられてたから……」
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