2.それが自分の価値なのだと識る

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 男は莉苑とユウを交互に眺めた。交渉の意味はよく分からなかったが、男の方はどうやらお気に召したらしい。ユウの出した条件にそのまま頷いた。  ホテルに着くとまずシャワーを浴びるように言われた。  全身を洗い流し、以前父親とする時にしたように後孔を解して洗浄する。その様子を見たユウは「本当だったんだ」と言った。何と返せばいいか分からなくて、莉苑は黙って目を逸らした。胎にずん、と重たいものが落ちた気がした。  莉苑が思っているよりも、その二時間は苦痛では無かった。客の男は乱暴をすることはなかったし、慣れない部分はユウがフォローをしてくれた。  手渡された二枚の紙幣を莉苑はじっと見つめた。  一万五千円。これが自分の価値だ。  それが安いのか高いのか、莉苑には解らない。  ぼう、と報酬を眺める莉苑はユウは邪気のない笑顔を向ける。 「よかったじゃん!あんまり多くないけどさ、これで結構ご飯食べれるし、薬も買えるし、ワンチャンホテルとか泊まれるし!ラッキーだよ!これ続けてお金貯めたらさ、なんだって出来るんだから」  ユウはそうやってやりたい事をしているのだろう。  自分は何をしたいのだろう。莉苑にはまだ分からない。それでも手元の二枚の白茶の紙が、莉苑の道を少しばかり照らしてくれているような気がした。 「リオン今日客取ったんだって?ユウから聞いたよ。初稼ぎおめでとう」
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