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目を覚ます直前、かすかに聞こえてくる包丁の音と、ふわりと漂う炊き立てのご飯や味噌汁の匂い。 テレビドラマとかアニメでしか見たことのない、僕が経験できなかった幸せそうな家族の光景が頭に浮かぶ。 近づいてくるスリッパの音。 カチャリと静かに開くドア。 ベッドに近づいてくる気配。 これがテレビドラマとかだと、母親に「早く起きなさい」とか言われながら肩を揺さぶられるんだ。 ベッドサイドに立ち、僕の顔を覗き込む気配と、肩を優しく揺さぶる大きな手。 (そうそう、こんな感じで…………、ん?) 思っていたのとちょっと違う。 温かい布団の中、まだ夢の中にいるような、ぼやけた頭で考える。 (手、デカいな……) 閉じたままだった重い瞼を半ば強引に開いていくが、朝の光が眩しくてはっきりと見えない。 「麻紘(まひろ)」 僕の名前を呼ぶ低い声と、顔のあたりで軋むベッドのスプリング。 誰かが枕元に座った気配がする。 徐々に視界がはっきりしてきて、目の前にいる男の顔を見て僕は硬直した。 「やっと目が覚めたか」 微笑みながら僕の頬を撫でる男。 「塩田(しおた)……」 「おう、おはよう」 「おは、よう……」 僕が朝の挨拶に応じると、弧を描いた唇が降りてきて、半開きだった僕の唇を塞いだ。 隙間からするりと侵入してきた肉厚な舌に翻弄され、のしかかってくる胸板を押し返そうとしていた僕の手は、いつの間にか縋りつくかのように塩田のTシャツをギュッと掴んでいた。 甘く優しいキスを与えられ、まるで恋人同士のようだと思った。 だが、僕たちは違う。 軽く音を立てて離れた唇を、若干の物足りなさを感じながらぼんやり眺めていると、塩田の親指が僕の濡れた唇を拭った。 「そんな顔をされると、俺の忍耐力がもたなくなる」 苦笑しながら塩田が言った。 「朝飯もうすぐできるから、お前はシャワーを浴びてこい。終わってそのまま寝たからベタついてるだろ」 「あ……」 ぼんやりとしていた頭の中に、昨夜の痴態が蘇ってくる。 僕の全身は瞬く間に赤く染まった。 「一応俺が拭いたけど汗もかいてるし、さっぱりしてこい」 そう言って塩田は立ち上がり、僕に手を差し伸べた。 腰の重だるさを感じていた僕は、その手を素直に取ってゆっくりと起き上がったのだが、ベッドから降りようとしたところで動けなくなった。 体のどこかが痛いとかいうわけではなく、今の僕は全裸で、このままだと布団で隠している部分を見られてしまうからだ。 今更とも思うが、明るい部屋の中で形が変わった状態のものを見られることには抵抗がある。 朝だからそうなっているだけなら別になんとも思わない。 潮田が揶揄ってきても「生理現象だ」で通せばいい。 だが、今のこれはそうじゃない。 さっきのキスだけでこうなってしまった。 それを塩田に知られるのは、なんだか恥ずかしくてたまらないのだ。 「どうした」 「あ、いや……」 僕が答えられずに口籠もっていると、察した塩田が勢いよく僕から布団を剥ぎ取った。 慌てて手で隠したが、片方の手は塩田に握られていて動かせず、必然的に片手で隠すことになった。 「朝だから……ってわけじゃなさそうだな」 さすがに片手では隠せなかった僕自身が、塩田に見られたことで更に形を変えていく。 「すごいな、昨日あんなに出したのに」 「頼むから、見ないでくれ……」 顔を背けながら言うと、塩田は、握っていた僕の指を弄りながら答えた。 「どうすっかな……、じゃあ、これ、どうにかしてくれよ、そしたら見るのやめてやる」 塩田は僕の後頭部を掴み、履いていたジョガーパンツのウエストを下着ごと引き下ろすと、膨らみつつあるものを取り出して僕の唇に押し付けた。 「舐めろ」 蔑むような目で、塩田が僕を見下ろしている。 そんな目をしないでくれと思いながらも、冷たい表情をした塩田に僕はたまらなく興奮し、後ろは触られてもいないのにヒクつき始めた。 まだ柔らかさのあるものに唇を開いて舌を這わせ、口中へ誘い、徐々に中で形を変えていく感触を味わう。 膨らみきった塩田のものが喉奥を刺激し、嗅ぎ慣れた雄の匂いがわずかに残っていた僕の理性を消し去っていった。 塩田に奉仕しながら自身を擦り、淫らな水音を口と手の両方でわざと立てて部屋の中に響かせると、塩田の両手が僕の頭を左右から掴み、腰を前後に揺らし始めた。 僕が自身から手を離し、口の中に入りきれない部分を両手で包むと、塩田の動きが激しくなっていった。 パチュパチュと音が響くたびに、自分の唾液と塩田の体液が口中で混ざり合い、唇の端から漏れ出て首筋を流れていった。 口中を蹂躙しつくされ、喉奥て塩田が達すると、僕はそれを喉を鳴らして飲み込んだ。 少しずつ元に戻っていく塩田のものを舌で舐め清めていると、頭を掴んでいた手が優しく僕の髪を撫で梳いた。 「いい子だ、ご褒美に俺がいかせてやる……、ああ、約束は守るさ、見ないでいてやる」 塩田は優しい声でそう言うと、僕をうつ伏せに押し倒し、大きな手で僕自身を包んだ。 「これなら俺からは見えない」 指先でこじ開けるかのように先端の穴を捏ねられ、僕の口からは淫らな声が勝手に溢れた。 塩田が手を動かすたびに、ぬちぬちと卑猥な音が聞こえてくる。 この音が自分の体から出ていると思うと、激しい羞恥で頭がおかしくなりそうだった。 「自分でするっ、離してっ」 「ダメだ、俺にやらせろ」   後ろから耳を舐られながら、耳元で響く塩田の低い声と巧みな手淫により、僕は瞬く間に絶頂へと昇り詰めた。 
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