1人が本棚に入れています
本棚に追加
第一部
「お帰りなさいませにゃん、ご主人様ー」
そう言って僕を出迎えてくれるのは、猫耳メイド姿のルミにゃん。もちろん本物ではないけれど、まるで本物の耳が生えたみたいな感じにぴったりフィットしてる。笑顔が今日も可愛くて、一日の疲れが一瞬にして吹き飛んだ。
「ただいまにゃん」
「お席にご案内しますにゃん。どうぞこちらへにゃん」
ここに通うようになってから、もう三年程が経つ。日々の仕事の疲れを癒すため、毎日ではないけど、時々仕事帰りにこの店に来るのだ。
でも、この語尾に「にゃん」をつけないといけないというのには、まだまだ慣れない。何故店員だけでなく客まで合わせないといけないのか……。
「はい、こちらメニューですにゃん。ご注文がお決まりになりましたら、こちらのにゃんにゃんコールでお呼びくださいにゃん」
「ありがとうにゃん」
どの猫耳メイドもかわいいけれど、特にこのルミにゃんは僕の一番の癒しだ。ルミにゃんのためにここに通ってるといっても過言ではない。
メニューを開く。
毎回思うことだけど、どれも美味しそうだ。この店のメニューはどれもこれも絶品だ。だからいつも何を食べようか迷うのだ。
……ん? このオムライスは新作か? この前来たときはなかったような……。
「ルミにゃーん」
「はーいにゃん、ご注文お決まりになりましたかにゃん?」
レジ辺りにいたルミにゃんが、すぐに気づいて来てくれる。
僕はオムライスを指さして言った。
「このオムライス、この前なかったにゃん。メニューに追加されたのかにゃん?」
「そのオムライスはごくたまに現れるメニューですにゃん」
周りの客に聞こえないようになのか、僕の耳元で小声で伝えるルミにゃん。
どういうこと?
顔に出ていたのか、ルミにゃんはすぐに付け加えた。
「仕組みはよくわからないですにゃん。でも、本当に、ごくたまーに、一つのメニューにだけ現れるんですにゃん。どのメニューにそれが現れるのかはルミにゃんにもわからないですにゃん」
「そうなのかにゃん。不思議なこともあるもんだにゃん」
とりあえずレアなメニューということだな。今日はオムライスにしよう。
「ルミにゃん」
「はいにゃん」
「このオムライスくださいにゃん」
「かしこまりましたにゃん」
にっこり笑うルミにゃん。ああ、いいなあ。どんなに疲れていても、この笑顔が見たら仕事も頑張ろうって思えるな。
最初のコメントを投稿しよう!