第一部

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第一部

「お帰りなさいませにゃん、ご主人様ー」  そう言って僕を出迎えてくれるのは、猫耳メイド姿のルミにゃん。もちろん本物ではないけれど、まるで本物の耳が生えたみたいな感じにぴったりフィットしてる。笑顔が今日も可愛くて、一日の疲れが一瞬にして吹き飛んだ。 「ただいまにゃん」 「お席にご案内しますにゃん。どうぞこちらへにゃん」  ここに通うようになってから、もう三年程が経つ。日々の仕事の疲れを癒すため、毎日ではないけど、時々仕事帰りにこの店に来るのだ。  でも、この語尾に「にゃん」をつけないといけないというのには、まだまだ慣れない。何故店員だけでなく客まで合わせないといけないのか……。 「はい、こちらメニューですにゃん。ご注文がお決まりになりましたら、こちらのにゃんにゃんコールでお呼びくださいにゃん」 「ありがとうにゃん」  どの猫耳メイドもかわいいけれど、特にこのルミにゃんは僕の一番の癒しだ。ルミにゃんのためにここに通ってるといっても過言ではない。    メニューを開く。  毎回思うことだけど、どれも美味しそうだ。この店のメニューはどれもこれも絶品だ。だからいつも何を食べようか迷うのだ。  ……ん? このオムライスは新作か? この前来たときはなかったような……。 「ルミにゃーん」 「はーいにゃん、ご注文お決まりになりましたかにゃん?」  レジ辺りにいたルミにゃんが、すぐに気づいて来てくれる。  僕はオムライスを指さして言った。 「このオムライス、この前なかったにゃん。メニューに追加されたのかにゃん?」 「そのオムライスはごくたまに現れるメニューですにゃん」  周りの客に聞こえないようになのか、僕の耳元で小声で伝えるルミにゃん。  どういうこと?  顔に出ていたのか、ルミにゃんはすぐに付け加えた。 「仕組みはよくわからないですにゃん。でも、本当に、ごくたまーに、一つのメニューにだけ現れるんですにゃん。どのメニューにそれが現れるのかはルミにゃんにもわからないですにゃん」 「そうなのかにゃん。不思議なこともあるもんだにゃん」  とりあえずレアなメニューということだな。今日はオムライスにしよう。 「ルミにゃん」 「はいにゃん」 「このオムライスくださいにゃん」 「かしこまりましたにゃん」  にっこり笑うルミにゃん。ああ、いいなあ。どんなに疲れていても、この笑顔が見たら仕事も頑張ろうって思えるな。
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