第一部

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 家を出て会社に向かう間、今まで見ていた世界がガラリと変わってしまった。  誰もが猫耳をつけている。  犬を散歩させているお年寄りも、集団登校している小学生たちも、コンビニから出てくるサラリーマン風の男も、そのコンビニの窓越しに見える女性の店員も。みんな猫耳をつけている。  電車に乗っている間も、皆が皆、猫耳をつけていた。  隣を見ても猫耳。立っている人を見ても猫耳。色とりどりの猫耳が僕の周りを囲んでいた。  猫耳かと思ったら本物の猫のこともあったけど。  僕が昨日、猫耳喫茶でほしいものは何かと聞かれたから、猫耳をみんなにつけてほしいと願ったことが、本当になってしまった。  法律で全員が猫耳をつけないといけなくなった。老若男女は関係ない。職業も関係ないし、とにかく外に出るときには必ず猫耳をつけないといけない。というか何故僕まで……。  まあ、猫耳つけるだけだし。そんな深刻なことでもないだろう。この時はのんきにそんなことを考えていた。
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