第一部

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「おはようございます……」 「おはようございます先輩! ぷっ、やっぱつけてきたんですね! お似合いですよー」 「笑うなよ……」  出勤早々、猫耳姿を見て笑ってくるのは後輩の赤見君。自分だって猫耳つけてるくせに。  僕は机に鞄を置き、ちらりと見、仕返しとばかりに言ってやる。 「赤見君こそ、猫耳よく似合ってるじゃないか。はい、チーズ」 「チーズ! って、やめてくださいよ! もう、何だってこんなのつけなくちゃいけないんですか……」  僕がスマホを向けるとノリノリでポーズをとったがすぐに我に返った赤見君。慌てて猫耳を手で押さえる。 「はあ……。こんなの彼女に見せられないなあ」 「赤見君の彼女は猫耳嫌いなのか?」 「いや、むしろすごく好きだと思うんですけど、こんなの見られたらいじり倒されそうで……。はあ……」  可愛がってもらえるならいいと思うのだが、赤見君としてはカッコいい姿を見せたいのだろう。赤見君はいわゆる『童顔』といえる顔立ちだ。だからカッコいいというより可愛い系なのだが、本人は可愛い評価が解せないようだ。  僕自身は赤見君はカッコいいと思っている。可愛いのは外見ばかりで、赤見君の中身を知ったら可愛いとはとても言えなくなると思う。 「こら、そこ! くだらないことくっちゃべってる暇があったら手を動かせ、手を!!」 「は、はい!」  うわー、課長いつにも増してイラついてるな。でも猫耳だから怖さは半減されるな。とか言ったら間違いなく仕事増やされそうだから黙っておこう。
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