妖狐の血判状

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「ただし3つの制約と1つの代償を伴う。制約はまず、一度変化した相手には二度と変化できない。もう一つは、変化した姿は24時間しか保たない。最後に、変化した姿を相手に見られてはならない。代償は、使いすぎると自分の姿を忘れてしまう恐れがある。人の身では変化の術に耐えることはできないからさ。まあそれを差し置いてもこの力は其方の復讐に大いに役に立つさ」  復讐。そう、私は深瀬マユミをはじめ、復讐を果たしたい相手はたくさんいる。これは不幸な私に向けられた一縷(いちる)のチャンスなんだ。そう思った。  妖狐の出会いと能力への期待に胸が疼き、思わず笑みをこぼしてしまった。 「なら、その能力もらうわ。そして奴らに復讐する!」 「良い返事だ」  すると空から一枚の紙が舞い落ちてくる。 「この紙に血判を」  私が指を差し出した瞬間、妖狐は指に軽く歯を立て傷を付ける。指先に血が滲むのを確認し、紙に押し当てた。 「これで契約成立だ。思う存分力を振るうが良い。哀れな小娘よ」  そう告げると(まばゆ)い光に視界を奪われて、気づいた時には紙も妖狐も消えていた。 「こ、これで本当に使えるの?」  半信半疑だった私は、試しに母の姿に変身してみることにした。  目を瞑り、母の姿を思い浮かべて念じてみる。 「ママになれ!」  目を開けるが自分の姿が変わった感覚はない。鏡を持っていないため、神社の手水舎(ちょうずや)に向かう。濁った水でも鏡の代わりになった。そこに写った姿は正真正銘母の姿そのものだった。 「本当に変わってる!信じられない!」  嬉しさと驚きで胸が高鳴った。この力があれば復讐が叶う。  翌日から行動を起こすことを決意した。
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