妖狐の血判状

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 そんな幸せを味わった後は復讐に移行する。  彼との楽しい食事を終えた後、今度は別の男子生徒に声をかけた。 「ねぇ、ハヤトくん!」 「ん、なに?」  彼もワタルくんに負けず顔立ちは良い。特に彼は私の初恋の相手でもあり、一度告白してフラれた過去を持つ。 「実は私ね、ハヤトくんのことが好きだったんだ」 「え、でもワタルと付き合っていたんじゃ」 「もう冷めちゃったの。しかもハヤトくんの方がカッコいいし優しいなって思って」  ハヤトくんも満更ではない様子で、私の申し入れをすんなりと受け入れてくれた。  手を繋ぎ、口づけを交わす。一通りの行為を終えた後は午後の授業のため別れ、トイレで元の姿に戻った。  午後の授業は一時中断となった。ちょうど窓ガラスが割られたことが教員に認知され、犯人探しの時間となったからだ。  犯人は案の定あっさりと見つかった。 「私じゃありません!何かの間違いです!」 「俺たちもそう信じたいんだがね、何人もの生徒が目撃してるんだ。なんで君がこんなことを」 「そんなはず」 「推薦も取り消さないといけない。明日、親を呼んで話をしよう」 「本当に違うんです!」  マユミは涙で顔を汚し、教員が去った後もその場でしゃがみ込み、「私じゃない」と言い続けていた。いい気味だ。  この件で私はまた暴行を受けるかと思ったが、今回は何事もなく下校していた。しかしその道中、彼女の元にワタルくんが駆け寄った。 「お前、どういうつもりだ!ハヤトと付き合ったんだって?浮気されていたのか、俺は!」 「ちょっと待ってよ!何の話か分からない!」 「もういい。お前とは別れる」 「いや!待ってよ!」  ワタルくんは聞く耳を持たず、マユミの制止を振り切って去っていった。  マユミはさらに大粒の涙を溢して再度しゃがみ込む。  私は笑いが込み上げそうになった。因果応報だ。私が受けた苦痛以上の不幸を味わうといい。  翌日、マユミは学校に来ることはなかった。
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