妖狐の血判状

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 ネットで手に入れた顔立ちの良い美女の姿を借り、夜の街へと出向いた。そこで数々の中年男性を(たぶら)かし、生活難や学費を理由に金を貢がせた。  そのおかげで私はこれまで以上に生活が潤い、初めてお金を気にせず好きな物が買えた。  その日も男とデートをし、欲しかったバッグを買ってもらった。家に帰ると母が心配そうな目を向け玄関で出迎えた。 「カレン、今何時だと思ってるの?こんな夜遅くまで一体何をしていたの?」  時計を確認するとすでに22時を回っており、時間を忘れて遊び歩いていたことに気がついた。 「友達と遊んでいただけだし、ごめんなさい。次から気を付けるから」  早く自室へ向かおうとすると母が腕を掴み引き留め、バッグに目を向けた。 「待って、その高そうなバッグは何?最近色んな物を買って帰るみたいだけど、そんなお金どこにあるの?」 「ほっといてよ!ママに迷惑かけたわけじゃないんだから何したって勝手でしょ!」 「カレン?」  母の手を振り解き、自室へと逃げるように去る。それ以上、母から何かを聞かれることはなかった。  手に入れた幸せを味わい過ぎて、私は少し情緒が不安定になってきたのかもしれない。しかし今まで味わってきた不幸を数えたら、まだ幸せは足りなかった。
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