妖狐の血判状

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 次の日、また別の男性とのデートを控えており、美女の姿を借りた私は待ち合わせ場所の駅へと向かっていた。 「中川さん!はじめまして!」 「やぁカレンちゃん。待っていたよ」  この男とは何度かメールでやり取りをし、会うのは初めてだったが、すでにそれなりの金をくれた。  なんとも寂しい男だ。内心、彼のことを嘲笑い、気持ちが悪いとも感じていたが、金が貰えれば何でもよかった。  汚い手を繋ぎ、歩き出そうとしたその時。 「レミちゃん!何してるんだ!?」  鋭い声が私の背中を刺した。  振り返るとそこには見知らぬ男が立っており、私たちのことを睨みつけている。おそらくこの姿、レミという女性の知り合いか何かだろう。 「俺だけが必要って言ってたのに、だから貢いできたのに、裏切ったな!」 「え、ちょっと何のことですか?」 「うるさい!よくも騙しやがって!」  その状況に呆れたのか、中川もいつの間にか手を離し、距離をとっていた。  男の癖に、助けようともしてくれないのか。  すると男は懐から刃物を取り出し、私に向かい突進してきた。  身の危険を感じた私はとりあえず一目散に逃げ出した。周りからは悲鳴が聞こえた。警察に駆け込もうかとも考えたが、今の姿で面倒ごとに巻き込まれたら厄介になると感じ、トイレに逃げ込み変身を解いた。  レミの姿を見失った男は血眼になって探している。元の姿に戻った私を横切り、一安心したが、緊張のあまり頭が回らずとりあえず逃げるように一目散に走った。  とりあえず家に辿り着きさえすれば安全だ。そこからしばらく大人しくしておけば良い。  恐怖と緊張で体に力が入り、思い切り扉を開く。 「マ、ママ。ただいま!」 「あら、どうしたのそんなに息を切らして」  呼吸が荒く、いつもと違う雰囲気を感じた母は、居間から姿を見せた。  私は安堵のため息をもらしたが、母は私を見るなり目を丸くした。 「え、あなた誰?」 「何言ってんの、ママ」  母が何を言っているのか分からず困惑するが、母も同様に何故か困惑しており身を縮め少し後ろに下がる。 「ちょっと、出て行って下さい!ここはあなたの家じゃありません!警察を呼びますよ!」 「本当にどうしたの?よく見てよママ!」 「やだ、なんなのこの人!」  母は慌てて携帯を取り出し電話をかけ始めた。 「もしもし警察ですか?今不審な男性が家に押し入ってるんです!」  普段とは違う、ただならぬ母の様子に恐怖を感じた私はその場から逃げ出してしまった。  すると偶然、カーブミラーに写った自分の姿が目に入り仰天した。何と、さっき襲ってきた男の姿になっていたからだ。  何度も戻れと念じるが元の姿に戻ることができない。試しに知っている女の姿に変身するが、それは可能なようだ。
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