妖狐の血判状

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 加藤カレンは自分の家庭環境が嫌いだった。  両親は私が生まれた直後に離婚しており、父は音信不通。母と暮らしていたが、母は精神疾患を患っており仕事に就くことができず、経済的に困窮し、爪に火をともす生活を送っていた。  それが原因で昔から同級生からのいじめを受けていた。毎日同じ服を着て、まともに髪を整えず、見るからに貧しかったため、嘲笑の的になったのだろう。  高校生活も地獄だ。今まさに校舎の踊り場で同級生から暴力を受けている真っ最中だ。 「ほんと、あんたの顔見てると無性に殴りたくなるわ」  主犯格の名は深瀬マユミ。周りには取り巻きが二人いた。計3人から暴力を受けた傷は熱い痛みが走るがもう慣れた。  目の周りに青あざを負い、唇は切れ、流した涙は頬に乾いて張り付く。  思わずマユミを鋭い目つきで睨みつけてしまう。それを見た彼女は青筋を額に張り付けた。 「その反抗的な目が一番むかつくんだよ!」  そう言うとカレンの頬を蹴り飛ばし、胸倉を掴んだ。  そのまま私を投げ飛ばし、3人は笑いながら踊り場を去っていった。  3人が見えなくなったのを確認し、制服の汚れを落とすために立ち上がると、階段の下で男性教師が歩いているのが目に入った。目が合った瞬間、バツが悪そうに目を逸らし、そそくさと去っていった。  余計なこと、面倒ごとには関わりたくないという本心があるのだろう。それでも教師かと、本気で失望した。
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