明治最終列車~明治45年7月29日午前8時。明治という時代が終わろうとしていたとき、新橋ステーションから豪華超特急列車が出発しようとしていました。万感を思いを込めて後世の人はこう呼びます。明治最終列車

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咲苗「お似合いですよ。私はてっきり良家のお嬢様だと」 渚「ありがとう」 彩乃「でも、その身請け話イヤなんだろう」 渚「面識も無い方で、勿論、私の部屋に揚がったこともなくて。そういう方がなんでって思ったのですが、おそらくブロマイドとか見て、私のファンになった方ではないかと」 さくら「あんた、じゃあ、あの洲崎の渚さんか。そりゃ、大枚はたいても請けたいという大旦那はいるわな」 彩乃「気乗りしないのは、それだけじゃないな」 渚「えっ・・・・」 彩乃「あんた、好きな人いるだろう」 渚「(顔、真っ赤にして)えっ・・・・どうして!」 彩乃「あたしは髪結いだよ。男と女の色事は分かってるよ。話してみなよ」 せりな「私も聞きたい」 さくら「聞かせておくれよ」 渚「洲崎の廓は役所公認なの。そういう所で働くには尋常小学校卒業であることが条件なのですが、私は家が貧乏だったので出ていなくて。それで、卒業見込みということで、昼間、尋常小学校に通っていて。こんな格好で通ってたので、女学生だと勘違いした帝大の学生さんにみそめられて。それで交際をはじめたんですけど・・・・・ずっと、遊女だったのを隠していたんですけど、彼から求婚されて・・・・それで、私、悪い、と思って、本当のこと話したんです。そしたら、考えようっていってくれたんです。考えようっていってくれたから、てっきり、私の境遇をどうかしてくれつのかと・・・・でも、それっきり会えなくなりました」 彩乃「男なんてそんなもんだよ」 渚「私の莫大な借金、学生さんにどうにかできるわけじゃなかったんですよ・・・・これでよかったんです」 さくら「所詮、人生は金かよ」 せりな「あんたにいわれたくない!」 とみんなでさくらを指差す。 渚「その後、急に身請け話が決まったんです」 彩乃「あんた、気がのらないんだろう。だったら逃げちゃいなよ」 渚「そんなことしたら、親が大変なことになります」 さくら「(カバンを上げて)金ならあるぞ(とまわりの視線感じて、下げる)」 彩乃「男のことが気になるんだろう。想いをぶちまけてみなよ」 ワインのビン持ったみやび現れて。 彩乃「あれ、社長、なんでワインのビンを?」 さくら「社長、一人で一杯やってたんですか?」 せりな「おまえじゃない!」 みやび「(いたずらっぽく笑って、ワインのビンを示して)藤宮をこれで眠らせた」 渚「じゃあ!」 みやび「下関まで起きないと思う。飲んだら底なしだから」 彩乃「やった!」 みやび「これで途中で降りれば、誰も捕まらないわよ」 さくら「よし、そうなったら、あたしが川原さんを逃がしてやる」 せりな「えっ?」 さくら「罪滅ぼしだっていったろう」 せりな「ハイ!」 みやび「車掌さん。あなたの協力が必要よ」 咲苗「委細承知でございます。三田尻で降りていただくようにはからいます」 彩乃「よし、これで決まった。せりなちゃんの髪は私が結ってやる。新しい時代にふさわしい洋髪でね」 せりなの髪を結う彩乃。 舞台袖を眺めて、れいかの様子を見ているみやび、ソファに座ってるさくら、などなどを。
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