明治最終列車~明治45年7月29日午前8時。明治という時代が終わろうとしていたとき、新橋ステーションから豪華超特急列車が出発しようとしていました。万感を思いを込めて後世の人はこう呼びます。明治最終列車

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53 浜辺 マリン・ルックの渚、彩乃、さくら、 セーラー服姿のみやびが、登場。 渚「うわー、なに、この格好?」 彩乃「マリンルックといって、これから流行るんだってよ」 さくら「おー、こういうのいいね」 みやび「私もかわいく決めましてよ」 とスカートの裾を持ってポーズ。 渚「ところで彩乃さん。やることがあるって?」 彩乃「ああ、それね」 と風呂敷から新選組のダンダラ羽織を出す。 彩乃「これはウチの父親が着ていたものだ」 さくら「彩乃さんのオヤジさん、新選組だったんだ」 彩乃「あたしの父親は新選組隊士の宮野勝之進だ。何でも若い頃、近藤勇のお供で広島まで来て、そこから一人で、この下関に潜り込み、当時、奇兵隊の軍艦だった山県公を狙ったといっていた。そのとき、何人かの奇兵隊を斬ったというので、その供養に、このダンダラ羽織を海に投げてほしいといわれてね」 みやび「そうだったの」 彩乃「じゃあ、投げるよ」 みんなで「せーの」と掛け声。 彩乃、客席へダンダラ羽織を投げる。 さくら「これで、オヤジさんへの供養になったね」 彩乃「何いってる。ウチのオヤジはピンピンしてるよ」 さくら「えーっ」 みんな、笑う。 そこへセーラー服姿の咲苗が駆けてくる。 咲苗「みなさーん、新しい年号が決まりましたよ」 渚「えっ、何ですか」 咲苗「(号外を見せ)大正 が新時代の年号です」 渚「大正」 さくら「大正」 彩乃「大正」 みやび「(咲苗が持つ号外を見て)易経の‘剛上って而して賢を尚び、能く健やかなるを止めしむるは大正也‘が出典なのね」 さくら「(カバンから札束を出して)よーし、大正の新時代にふさわしい女学校に入るぞ!」 渚「女学校って?」 さくら「女の子だったら誰でも学べる女学校だ」 みやび「その女学校の名前は?」 さくら「目黒川女学館」 渚「目黒川女学館・・・・・・」 さくら「社長には理事長に就任いただきます」 みやび「まかせといて」 彩乃「結髪は勿論あたしだね」 みやび「渚ちゃんも、もちろん協力してくれるわよね」 さくら「そうだ。ブロマイド売り上げNO1のアイドルが協力してくれればありがたい」 渚「(目を伏せて)私は・・・・」 咲苗「(手紙を出して)これ、渚さん宛てに速達扱いで来たものです。実は既に郵便局で仕分けされて、私たちが乗ってきた列車の郵便者に積まれていたものです。列車気付で来まして、先ほど下関郵便局で仕分けされ、列車に配達されました」 渚、受け取って、封を切り、便箋を出す。 見る見る目を見開き、笑い顔に。 渚「えーっ、ウソ(と喜びの声)」 みやび「どうしたの?」 彩乃「なんかあったか?」 さくら「どうした、どうした」 渚「彼からの手紙なの。な、なんと私を身請けしてくれたのは、彼の父親で、私を嫁にするためとのこと」 彩乃「よく父親がそんな金出したね」 渚「彼、文学を志望してたんだけど、私を嫁にすることを許してもらう代わりに、財閥の後継者になることを承諾したんだって」 さくら「なるほど。やっぱり金か」 咲苗がさくらをこづく。 さくら「痛いな、車掌さん」 みんな、笑う。 渚「とにかく早く話がしたいって。下関に着いたら、その夜の上りで帰ってこいって。すぐ帰らないと」 咲苗「上り第二列車は19時10分出発です。お乗り遅れのないように」 みんな、咲苗について駅の方向へ歩いていく。 53 資料映像 来るべき大正文化の様々な画像が映し出されながら。 咲苗の声「この日、新天皇は、‘ここに先帝ノ定制ニ従ヒ、明治45年7月30日以後ヲ改メテ大正元年ト為す。主者施行せよ‘との詔書を発布。 ここに新時代『大正』が開幕しました。 このとき、東京は人口約162万人、自転車台数3万2千62、自動車台数299、タクシー6台という規模の都市でしたが、やがて、この都市を背景にした大衆文化が起こり、自由を求める民衆の運動が湧き上がってくるのです。 大正―それは西洋への憧れと日本古来の伝統をいつくしむ日本人の精神が交差した大正ロマンの時代。 そして、デモクラシーと来るべきファシズムの時代への戦争と平和の分かれ道となった時代」
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