明治最終列車~明治45年7月29日午前8時。明治という時代が終わろうとしていたとき、新橋ステーションから豪華超特急列車が出発しようとしていました。万感を思いを込めて後世の人はこう呼びます。明治最終列車

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3 列車・展望車 すぐに、咲苗を先頭に、みやび、れいか、渚、さくら、彩乃が出てくる。 咲苗以外、全員、ソファに座る。 咲苗「皆様、世界の一等国日本が誇る下関行き特別急行列車へようこそ。私は、この列車の列車長の木村咲苗です。フランス語では、シェフ・ド・トランと呼ばれます(と腕の青い腕章を見せる。ちなみにリボンも合わせて青色)。この列車は、朝8時30分に新橋駅を出発、平均時速45キロメートルで、下関まで25時間15分で走ります。下関着は明朝9時38分です。それまでの間、どうぞ夢の旅をお過ごしください」 汽笛が鳴る。 咲苗「では、いよいよ出発です」 4 新橋駅・ホーム 機関車が動き出す。 5 展望車 ソファのみんな、そわそわしてるの気づいて。 彩乃、こどものようにソファに膝まで乗って、窓に向かって。 れいか「社長。横浜駅では降りていただかないと」 みやび「藤宮。この列車は横浜に止まらない事知らないの?」 さくら、カバンを抱えたまま震えている。 彩乃、立ったまま座ってる渚をしげしげと眺めていて。 彩乃「あんた、一見すると良家の子女風だけど、なんだか妙に艶っぽいね」 渚、戸惑って、無視するように窓を見ている。 咲苗「この列車は横浜駅に入らず、平沼駅に止まります」 6平沼駅・ホーム  シューっと汽車の停車。 7展望車 軍人が突然、入ってくる。 驚くメンバーたち。 軍人「星野みやび殿下。山県公の命にてお迎えに上がりました。いざ、帝都にお帰りを」 みやび「お断りします」 軍人「いたし方ありません。藤宮先生、ご助力を」 軍人、れいか、両脇からみやびをつかむ。 みやび「何をするのです。日露戦争以来、軍人は何でもできると思っている。戦争で世界の一等国になったことが、そんなにエライの?」 みやび、じたばたして動かない。 そこへ、咲苗、大きな袋を持って出てくる。 彩乃「それなんだい?」 咲苗「あっ、これは郵便袋。この列車、汽車のすぐ後ろに郵便車が着いていて、各駅に近づくたびに、ボーン!とこの袋をプラットホームへ投げ込むのです」 彩乃「へえー」 と瞬く間に郵便袋を奪い、軍人に押し付ける。 彩乃「あたしゃ、203高地で何万人も兵隊さん死なせたノギとかいう軍人が嫌いなんでね」 SE 汽笛  咲苗「あっ、列車が出ます」 8 平沼駅・ホーム  車輪が動く
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