明治最終列車~明治45年7月29日午前8時。明治という時代が終わろうとしていたとき、新橋ステーションから豪華超特急列車が出発しようとしていました。万感を思いを込めて後世の人はこう呼びます。明治最終列車

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17展望車 咲苗「ただ今16時8分。名古屋着です」 弁当売り入ってくる。 この弁当売り、メイドさんの格好をしているといい。 さくら、重箱の弁当をカバンから札出して買う。 彩乃「へー、あんた、金持ちだねえ~。一円も出して弁当買うなんてね」 さくら、弁当を隠す。 渚、先ほどの手帳を見ている。 れいか、展望車の入り口で何か紙を受け取る。 それを見ながら戻ってくる。 渚、驚いた表情をして、あわてて手帳を隠す。 下手で、れいか、みやびと談笑。 渚、いたたまれず、彩乃の手を引いて上手へ。 彩乃「なんだい?」 渚「あの藤宮れいかさん、政府の密偵なんです」 彩乃「なんだって?」 渚「(手帳を見せて)誰かを捕まえるために、この列車に乗りこんだんです」 彩乃「誰を・・・・・まさか、あんたじゃ」 渚「い、いえ、私、悪い事は何も・・・・悪い事は・・・・してないけど」 彩乃「そりゃ、そうだろう。あんた、洲崎の遊女の渚だろう」 渚「どうして分かったのです」 彩乃「あたしは髪結いだよ。洲崎にも出かけてるんだ。あんたの髪も何回か結ってるはずだよ。それに洲崎の渚といえば、ブロマイドも出てるほど有名だからね」 渚「(動揺していて)」 彩乃「囲われてる遊女が、どうして一人で旅ができるんだい。まさか、足抜けじゃ」 渚「違います。廓の主人もちゃんと承知しています」 彩乃「事情がありそうだね。まあ、いいよ・・・・あたしは誰が捕まるのか・・・・だよね。捕まるとすれば」 とさくらを見る。 彩乃、さくらに近づく。 さくら、彩乃を仰ぎ見て。 彩乃「(さくらの隣に座り)政府の手先がこの列車に乗ってるらしい。乗客の誰かを捕まえるそうだ。あんた、身に覚えはないかい?」 さくら「(カバンをぎゅっと握り締め)わ、私は何も・・・・何もしてないんだ。ただ、世間が」 彩乃「世間がどうしたんだ?」 さくら「口をつぐむ」 彩乃「あたしはね。あんたが何をしようと関係ない。どうせ密偵なんてのは、士族反乱の時代から政治犯目当てだってのは分かってる。もうすぐ夜だ。大阪あたりで降りちゃいな」 さくら「(震えている)」 フレームの左はれいかとみやび、ソファはさくらと彩乃、上手に渚。 それぞれの様子を見せながら。
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