明治最終列車~明治45年7月29日午前8時。明治という時代が終わろうとしていたとき、新橋ステーションから豪華超特急列車が出発しようとしていました。万感を思いを込めて後世の人はこう呼びます。明治最終列車

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18 京都駅・ホーム(夜) 汽車が入ってくる。 東寺の五重塔が見える。 19 展望車(夜) 咲苗「19時5分。京都着」 入り口からおずおずとした足取りで、せりなが現れる。 袴姿だが、地味な色合い。 場違いな感じで入ってきて、おどおどしてソファに座る。 れいか「(ソファに近づいてきて)あなた、どこから来たの?」 せりな「京都です」 れいか「京都から乗ったのは分かるわ。その前はどこから来たかということよ」 ソファの渚と彩乃、見ていて。 彩乃「まさかあの娘では?」 渚「悪い事してるようには見えないけど」 さくら、いたたまれず立ち上がる。 れいか「待ちなさい。塩屋さくらさん」 さくら「(名前を呼ばれてドキっとする)」 れいか「安心して、今はあなたにまで手が回らない」 せりな「(さくらを見て)あなたが塩屋さくら・・・・」 れいか「塩屋さんを見て驚いた?あなたがたが憎む人だものね」 せりな「憎むも何もはじめて会う人です」 れいか「そうね。はじめて会う人ね。でも塩屋さんの名前は知ってるわね。東京の米相場師・塩屋さくらをね」 さくら、へなへなと床に座り込む。 れいか「ここに電報があるわ。富山県の警察が発信した原内務大臣宛のもので、本日午後1時ごろ、折からの米価高騰に憤った老幼の女子百名ばかりが津波のごとく、富山市神通川西岸地区の富豪方をことごとく襲撃、蔵の米を強奪、多数の巡査出張して、ようやく事なきを得るも、なお、首謀者とおぼしき15歳の女子が逃亡中とのこと、とあるわ」 せりな「それが私だというのですか?午後1時ごろ、富山にいた私がどうして、今頃、ここにいるのですか?富山から京都まで6時間はかかります。時刻表を調べてください」 れいか「車掌さん。時刻表持ってきて」 咲苗「(ためらってる)」 れいか「早くしなさい。林逓信大臣に報告するわよ」 咲苗、時刻表を持ってきて、れいかに渡す。 れいか「(時刻表をめくって)たしかに、午後1時に発生して、同30分に鎮圧された暴動の現場から富山駅まで歩いて1時間、午後2時5分発の京都行きには間に合わないわね。その次は午後3時台だから、それだと今、この列車に乗り込んでいるわけがない。まあ、いいわ。時間をかけてつきとめてやる」 彩乃「(せりなに)気にしないで。下関まではまだたっぷり時間がある」 渚「そうよ。夜はまだはじまったばかりよ」 せりな、彩乃、渚。
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