明治最終列車~明治45年7月29日午前8時。明治という時代が終わろうとしていたとき、新橋ステーションから豪華超特急列車が出発しようとしていました。万感を思いを込めて後世の人はこう呼びます。明治最終列車

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1 新橋駅・外観 スーパー「明治45年7月29日」 2 同ホーム 咲苗の声「明治45年7月29日午前8時。明治という時代が終わろうとしていたとき、新橋ステーションから豪華超特急列車が出発しようとしていました。万感を思いを込めて、後世の人はこう呼びます。明治最終列車と」 旅立ちを思わせる音楽入ってー。 みやび、れいかを追いかけてきて。 れいか「社長、社長、お待ちを」 みやび「藤宮、おまえは、なぜついてくる?」 れいか「なぜ?と申されましても、天皇陛下が重態の床にあられるのに、皇族たる社長が帝都を離れるようなことがありましては」 みやび「私は遊びではなく、仕事で台湾へ参るのです」 れいか「元老の山県公、西園寺公からも、社長方は帝都に在られて、年号改元のことに備えられるように、とのご伝言がございます」 みやび「藤宮も知ってるでしょう?日清・日露の両戦役で得た植民地の権益が皇室に上納されていることを。私は天皇陛下より、台湾のバナナ輸入会社を任されております。藤宮も知ってるでしょう?日清・日露の両戦役で得た植民地の権益が皇室に上納されていることを。止め立ては無用のことよ」 ときびすを返して、列車へ歩いていく。 れいか、追いかけて。 入れ替わるように、渚が出てくる。 渚、列車を見ていて。 そこへ彩乃飛び出してきて、ドン、と渚にぶつかる。 彩乃「あっと、ごめんなさいよ」 渚「いいえ、私こそ」 彩乃「あんたも、下関行きの特急に乗るんかえ?見たところ、良家のお嬢さんのようだけど(と背が高い渚を見上げて)へえ~、お嬢さんはやっぱり一等車?」 渚「いいえ、二等車です」 彩乃「あたしと同じだ。あたしゃ、銀座で洋髪専門の髪結いやっとってね。今まで貯めた金はたいて贅沢旅行しようと思ってね。二等で14円92銭。これで新橋―下関を行って帰ってくるだけの金で二俵の米が買えるってね(と大笑いする)」 と、そこへ、さくらが出てきて。 ドンと押されて、渚、彩乃、さくらがこける。 彩乃「な、なんだ!」 さくら「あ、相済みません」 と周りをきょろきょろして、顔を隠すように列車へ乗り込む。 彩乃「ありゃ、なんだい。まるで男から逃げてるようだな」 咲苗が出てくる。 咲苗「下関行き特急列車に乗車の方、お早くお乗りください」 彩乃「(懐中時計を見て)ありゃ、もうこんな時間」 と慌てて、列車に乗り込む。 渚、咲苗も続く。
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