開発中だったBLアプリゲームの世界に転生したけどこの世界バクってやがる

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 やっとこのクソゲーをクリア出来る。数々のバッドエンドフラグを折り、好感度を微調整して辿りついたクライマックスシーン。目の前には微笑みながら俺を見つめる金髪碧眼の美男子、彼こそこの国の第一王子で俺の婚約者シリウスだ。でも肩書なんてどうでもいい、そして俺の気持ちさえもどうでもいい、ただ単に一番攻略難度の低いキャラを狙っただけだ。  最後に彼の告白を受け入れたらハッピーエンド。だから何の気持ちものらないまま好きだと告げた。すると王子の頬が赤く染まり造り物のように美しいその唇から甘いボイスが溢れる。  「譚。莉カ繧呈コ?縺溘@縺ヲ縺?∪縺帙s蜀崎オキ蜍輔@縺セ縺」  しかしその声は文字化けしたように意味を成さない音の連続で、同時にノイズが入ったような不協和音が周囲に響き渡る。ぐにゃりと色を無くした世界が歪む、あぁまた駄目だった。ざーざーと砂嵐が舞う視界がぶつりと途切れ、再び目を開ければスタート地点の寮室だった。  「ふざけんなよ!このクソゲー!どうやったらこの世界から抜け出せんだよ!!」    腹いせに照明スタンドを倒した拍子に指を切って血が溢れる、ハッピーエンドを迎えればと思ったのに結果はバッドエンドと同じでゲームの最初に戻されただけ。泣く歳でもないのに視界が膜で覆われポトリと掌を濡らした。何度繰り返したかもう自分でも分からない、心が折れてしまった。  こんな時アイツが居てくれれば、”少し休憩しよう、俺も一緒に考えるから”と言ってくれたんだろうか。バグが直らなくて残業している俺にいつも付き合ってくれた面倒見の良い同僚。  「……なぁ教えてくれよ、鏑木」    その言葉は虚しく響き、返事など返ってくるはずもない。だってこの世界に鏑木は居ないのだから。
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